on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
- 
知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)
- 独創的で、対人能力が高い。空間把握力、全体像や物事の関係性を把握する能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2016-10-30

ディスレクシアだと自覚していない子へのディスレクシア英語指導、のために

いま、土曜の深夜にこれを書いています。
夜中の妄想にならないようにしたいです。。

☆ ☆ ☆

もう10年以上、土曜の夜は予備校で授業をしています。
予備校といっても、教壇から一方的に話すスタイルではなく
演習、添削、1対1での議論がメインです。
生徒との関係も良く(と自分では思っていて)、教務の評価も高く、
1週間のなかでも大事な時間でした。

はじめてディスレクシアの生徒に気付いたのも、この授業でした→
トップレベルの進学校に通っているのに、基本的な漢字を忘れてたり
スペリングミスがやたら多くて点数が残らなかったり。
話せば賢いのに、答案がうまくまとめられない。誤字が多い。
字のバランスが悪い。読んだ後やたら疲れている・・・

こういう子たちをどう伸ばすのかは、
私のディスレクシア・ジャーニーの一大テーマになりました。

難関大用予備校で出会うディスレクシアの受験生に対しては、
「ディスレクシア」「学習障害」といった言葉を一切使わずに
うまいタイミングを見つけて特性を指摘することが、
できれば必要だと思っています。

#今日、前からこの子はディスレクシアだろうと思っていた子が、
ついに「英語が読めない。日本語と同じ程度に分かりたいのだが、分からない」
と相談に来てくれたので、キタ━(゚∀゚)━と嬉しくなって
「イメージ先行型だよね?」
「わかってても言葉でまとめづらそうだよね?」
「すごくいいことを書いているけど、キーワードが抜けてるので、そこを頑張れるといいね。社会でも同じじゃない?」
「読んでるとすごく疲れるでしょう」
「ここまで来るのに、相当努力してきたよね。中1の時とか、大変じゃなかった?」
「文章を読んで全体の流れを把握する力が、他の子よりもかなり高いんだと思うよ。それが答案に出てる」
「がっちりと対比的な内容を書くより、イメージからストーリーを書くほうが得意だよね」
「まわりが難しいと言っていることが簡単にわかり、簡単だと言うことがなかなかできなかったりしない?」
と話したら、かなり当たっていたと見え、彼はがくぜんとしながら
「これは思春期のとがりなのか、それとも? と思ったことはある」
と言ってくれました。(その他いろいろ告白してくれましたが略)

もう11月という時期の受験生にとっては、かなりの衝撃だったことでしょう。
こう書いてみても、私も色々言い過ぎで変な講師ですね(笑)
でも、「私は、そういう特性をもった人に特別な興味をもっていろいろ調べているわけ。にわかに信じがたいだろうけど。キミは地頭はいいし、まわりの人とは違う成長曲線に沿って英語力がついていくのだから、自信をもっていこうよ」
と伝えたので、来週も授業に来るはず(って、やっぱり変な講師ですね。)#

ディスレクシアの診断がつくくらい明らかに周りとは違っている子に
違うアプローチで英語を指導することは、もちろんとても必要です
(それを行おうとしているのがもじこ塾です)が、
自分でディスレクシアだと気付いていない子に
さりげなく違うアプローチで英語を指導することも、
同じくらい必要だと思っています。

☆ ☆ ☆

そして今日。そのための大きな前進がありました。
遅くとも年明けには、正式発表できる予定です。
それに伴い、このブログの運営形態も少し変えないといけないかもしれません。

5年前にディスレクシアだと知らずに出会った最初の生徒に、
もしも「5年前はごめんね。ついにここまで来たよ」と伝えたら、
きっと「それはすごいですね」と言ってくれる気がする、、
って、なんのことだか分かりませんね。すみません。
近日中の発表を、どうかお待ち下さい。



2016-10-21

ディスレクシアの寝落ち問題。

いま、もじこ塾で最もホットな話題(?!)、それは「寝落ち」です。

少なからぬ割合の子が、読んでいる最中、一瞬意識が飛びます。
中学生は少ない(まだそこまでの量を読んでいないので)が、
学年が上がり、読む量が増えると、寝落ち率も増える気がします。
現時点の実感では、ディスレクシアの生徒の3割が、
英語を読んでいて(または字を目で追いながら聞いていて)寝落ちします。

個人的意見ですが、ディスレクシアと寝落ちは関係があり、
脳の使い方の違いによる過労が原因だと、私は思ってます。

ディスレクシアで寝落ちする生徒への対策としては・・・

まず、寝落ちがディスレクシアに関係があるものだと認識することが、
第一段階だと感じます。
寝落ちは、気のゆるみややる気のなさに由来するものではない、
読むというのはそれだけの大変な労力を要することなのだ、
寝落ちは例外的状況ではないと、本人が受け入れることです。

その上で、教師が寝落ちを非難することなく、オープンな話題にすること。
目の前で遠慮なく寝落ちしてもらうこと。
これが第二段階です。
これができれば、生徒は少しずつ心を開いてくれるようになります。
寝落ちする生徒は、寝落ちすることを見せまいと、色々とかたくな※なので
そのバリアを取り払うことが必要だと感じます。


教師の目の前で読もうとしない(すぐ諦める、宿題として持ち帰ろうとする)
こちらが勧めたことをしようとしない、など。
雑談をやたら好むのも、読むのを避ける行動の一つかもしれません。


その上で、寝落ちにどう対処するかを考えるのが第三段階ですが、
・・・これがまだ見つかっていません。
誰か良い方法を知っていたら、教えてほしいです。

前の日にしっかり寝ること、食生活を変えること、
(寝落ちする子は、本当に個人的な意見ですが、独特の甘いにおいがします)
などは多少は役立ちそうですが、決定打にはならないようです。

気圧や満月(?)も、関係あるかもしれません。
どんよりした雨の日、満月の日は、特に寝落ちしやすいようです。
「月に1回、特に寝落ちしやすい日がある」と言った子もいます。
男子なのに!∑( ̄0 ̄

☆ ☆ ☆

読みながら寝落ちしそうになる姿は、傍で見ていて本当につらそうです。
眠るというより、意識を失うというか、気絶するような感じに近いです。
そういう生徒は読もうとする時、体全体から気が張った緊張感が出ています。

そんな、寝落ちする生徒の一人に
「なんだか見ていて、雲梯(うんてい)にずっとぶら下がっているとか、
登り棒にずっとつかまっている、みたいな感じがするよ。
あんまり込み入ったことを話しかけてはまずい、みたいな」
と言ってみたところ、
「わかりますか?」と言われ、
以来、彼は寝落ちの時の気分をいろいろ話してくれるようになりました。
「全身がぐったり疲れる。特に足がだるい」
「もう何も考えられないくらい頭が疲れる」など。。

今日は「気が済むまで寝てみて、その後どうなるのか」実験しました。
3時間半近くかけて、某難関大の1年分の問題のうち80%を解きました。

30分解く→30分寝る→30分解く→20分寝る→30分解く→30分寝る→30分解く
という展開になりました。

起きている時間だけ見れば、普通の子と同じくらいのスピード感で読解しますし
正解できるだけの構文把握力と論理的思考力はある(読み上げは必要)のですが、
寝落ちも含めれば、倍くらいの時間が必要です。

彼にとって読むことは、逆風のなか岩場を登るような、大変な格闘です。
もちろん、難関私大の問題なので難しい文章ではあるのですが、
それにしても、普通の子が絶対にしていないレベルの苦労をしています。

こんなに辛い思いをしてまで、読字する必要があるのだろうか・・・
この疑問は、
「こんなに字の解読に苦労している生徒の存在を、大学側は想定していないだろうに。
その大学で学べるだけの論理的思考力を証明する方法を、大学側は他に用意すべきではないか」という方向にも行きますし、
「こんなふうに真っ正面から困難にぶつかっていく方法は間違っていて、
寝落ちを克服できる方法が実はあるのかも」という方向にも行きます。
でも今はとりあえず、入試対策をするしかありません。

~ ~ ~

ネットで英語の文章を検索すると、「ディスレクシアだと睡眠時間が長く必要」という話はかなり出てくるのですが、「読んでいる最中に寝てしまう」という話はほとんど出てきません。
関連記事を、参考のために訳しておきます。

①原文→
独自なディスレクシア教育を行っているらしいカナダの団体。
この比喩にはとても納得しました。
どんな子供も、睡眠・食事・運動が必要だが、ディスレクシアの子が教室でインプット/アウトプットするために必要な脳の労力の差は大変なものだ。それは歩くことと走ることの差に相当する。ペース配分をきちんとすれば、一日中だって歩くことは可能だが、全速力で一日中走れと言われても、1時間も持たないだろう。ディスレクシアの人は脳の限界に毎日挑戦している。時には成功し、時には力尽きる。」

と言った上で、ディスレクシアに必要なこととして、
・十分な睡眠
・しっかり朝食をとること(日本の常識と内容が違うようですが)、
・水を十分に飲むこと(「水を十分に飲まないと、頭痛や傾眠に陥ることがある」)
・オメガ3油とビタミンDを摂ること
・砂糖を控えること
・運動すること・・・を挙げています。

水はかなり大事なようですね。もじこ塾ではお茶を出しています^^。


②原文→
「ディスレクシアの子の睡眠の質は普通の子の睡眠と違う」
「読字障害の子は、ステージ4の睡眠(深い睡眠)が通常と比べかなり多く、レム睡眠が少なく、レム睡眠に移行するまでの時間が長く、最初のノンレム睡眠のサイクルが長いことが明らかになった。
こうした睡眠構造の違いにつながる可能性のある要素のうち、慢性的な睡眠不足と成熟の遅れ(?maturational delay)特に顕著である。こうした要因は単独でも複合的にも、読字障害の子の情報処理を阻害し、認知の欠陥に加担する可能性がある。」


2016-10-06

ディスレクシアだとIQが実際より低めに出る

ディスレクシアとIQは無関係」という古い記事を読んだ方から、ディスレクシアとIQの関係についてご質問を受けました。
その方にお答えするために読んだものを、訳しておきます。

とても勉強になる記事なのですが、すごく微妙な話題であることも重々承知しています。。ので、こんな注意書きを最初に書くことをお許し下さい:
もじこは知能検査の専門家ではありません。この記事をきっかけとする個別の相談に答えることはもじこの能力を超えており、お受けしかねます。あらかじめご了承下さい。

内容:
・ディスレクシアの場合、WISCのFSIQ(フルスケールIQ)よりも「GIA」(言語理解と知覚推理の平均)の方が、その子の知能を適切に反映している
・ディスレクシアだと、IQが本来の知的能力より低く出る

「隠れディスレクシア」のdyslexic advantageのサイトからの抄訳です。

ギフテッドかつディスレクシアの子を念頭においた記事ですが、
どんなディスレクシアの子にもあてはまる気がします。

なお、ディスレクシアのIQ(FSIQ)については、
「知的障害に区分されるかどうかの瀬戸際にいない限りは、
そこまで細かい数字にとらわれる必要はない」
というのが当ブログの見解です。

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①原文→
ディスレクシア児においては、FSIQよりもGAI(General Abilities Index:一般能力指標)のほうが、高次の論理的思考力の指標として信頼が置ける可能性がある 

FSIQはVCI(言語理解)、PRI(知覚推理)、WMI(ワーキングメモリ)、PSI(処理速度)の4区分の合計から構成されている。
このため、この4区分をすべて合計するFSIQよりも、言語理解と知覚推理のみの合計であるGAI(一般能力指標)が、高次の論理的思考力すなわち知能の推定値としてはより正確である可能性が高い。
GAIはFSIQに相当するものである。当クリニック(訳注:Dyslexic Advantageのエイデ夫妻が開業しているディスレクシア専門クリニック)の典型的なプロフィールは、VCI(言語理解)とPRI(知覚推理)の合計スコアが平均以上、WMI(ワーキングメモリ)が平均または平均よりやや下、PSI(処理速度)がさらに低い、というものだ。
この結果、GAIを使用しないことは、ギフテッドプログラムから除外され能力を過小評価される生徒が出てくるなどの、不適切な展開につながる可能性がある。
(訳注:日本版WISC-IVについて、同じ内容が、ここまではっきりとではないですが、書かれています→)


IQスコアは完璧ではない  

どんなテストも、すべての能力を評価できるわけではないこと、また疲れ、不安、完璧主義などの理由から、検査結果が不正確になる可能性があることを、認識しておくべきだ。話し始めるのが遅い子供は、IQテストの言語に関する項目で本来より低い成績になるだろう。答えが短すぎて、解答に対しフルスコアがもらえない可能性がある。
幼いディスレクシアの子で、反転が多く起きたり、処理速度が大幅に遅かったりする場合も、反転によるミスや時間のロスゆえに、知覚推理のスコアが能力より低く出る。
それでもなお、IQテストと達成度の両方を見ることが黄金律だと、私たちは考える。
ディスレクシアの科学的研究と教育研究の両方とも、ディスレクシアは能力と達成度が乖離していることを研究のベースとしてきた。
IQテストを行うことには、欠点よりも利点の方が多い。スコアがその子の知識を適切に反映していないように見受けられた場合は、少し待って、一定期間を置いてからの再検査を検討すべきだ。
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原文→
ディスレクシア/ディスグラフィア(書字障害)はIQスコアに影響を及ぼすか

結論から言うと答えは「イエス」だ。
児童向け検査の精度に影響を及ぼす要素はたくさんある。生徒の性格(完璧主義、内向的)、話し言葉の流暢さ、忍耐強さ/立ち直りの力、言葉の正確さなど、さまざまな要素が、検査点数に知的能力がどの程度正しく反映されるかに影響を与える。
だがIQテストは、検査の種類によって長所と短所がある。
(訳注:このあと、WISC-Vなど、日本には入っていない検査の比較の話が続くので省略)。
ギフテッドでディスレクシアの場合、GAIを専門家にチェックしてもらうことも重要だ。なぜなら、全検査(FSIQ)だけでは、高度な概念把握力や論理的思考力を表さないからだ。
GAIがFSIQに等しいと見なせるのは、ディスレクシアに起因する各スコアの大きな乖離がみられる場合である。
WISC-Vでは、GAIを構成する4つのスコアは、言語理解(類似・単語)、非言語理解(積木模様・絵の概念・figure weights)である。
重要なことに、GAIは、記号探し、コーディング(書かれた記号を写す)、コーディング(聴覚ワーキングメモリとシークエンシング)を含まない。
このことは、FSIQを児童の論理的思考力・概念的能力・知識の土台の正確な推定とするためには、重要な要件である。
ディスレクシア/ディスグラフィアとも、コーディング、記号探し、符号のスコアが低く出ることに関係している
当クリニックに来るギフテッドでディスレクシアの生徒の典型的なプロフィールは、言語理解が最も高く、続いて非言語理解が高いというものだ。
ワーキングメモリは、幼い頃は(同年齢と比べて)弱いが、成長とともに平均の範囲に落ち着く傾向がある。
圧倒的に低いのは処理速度で、このことは通常、その子がディスグラフィアも持つことを意味する。
(中略)我々の実践においては、下位検査間の差が20~25ポイント以上あることを、中~重度の「特異的学習障害」つまり読字障害、書字障害、算数障害(どの下位検査に差があるかによって異なる)の指標と考える。
保護者は、ディスレクシアのFSIQが低くなることを認識しておく必要がある。
というのも、もしGAIがギフテッドプログラムのカットオフ条件なら、その生徒は適切な配慮を受けた上でギフテッドプログラムに入るのが、最適な配置である可能性もあるからだ。
☆  ☆  ☆
かつて知的障害者の施設で栄養士として働いていたという方から、
「思えばその施設には、しろうとが見ても『明らかに、あなたはここにいるべきではないでしょう』という、知的に問題のない人が何人かいた。
あれはディスレクシアだったかもしれない」
という話を聞いたことがあります(ノД`)
この記事を訳してここに置いておくのは、 そういう誤診が今後断じてあってはならない、という思いからです。

しつこいですが、
この記事を出すことが、お子さんのWISCやIQの数値への一喜一憂を助長しないことを願っています。