on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
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知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
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独創的で、​​対人能力が高い。
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全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力
に長ける。
- ​音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- ​読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから​
- ​細​​​​かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
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10人に1人程度いるというのが通説
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- 家族性であり、遺伝による​。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい



当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2016-11-23

「英語力=英単語のデコーディング能力」ではない

発達性ディスレクシア研究会の研修会に行ってきました。
久しぶりに、目が覚めるような話を聞けました!

◆マックス・コルトハート教授は、二重経路理論という、この業界では有名な読みのモデルを提唱した方。
今日のお話は、発達性ディスレクシア(=生まれつきのディスレクシア)には7つのタイプ(!)がある、というもの。

ディスレクシアにさまざまなタイプがあることは、今日の雰囲気だと研究者の間では既定路線のようでしたが、一般にはそこまで知られていない気がします。

・「音韻性ディスレクシア」(phonological dyslexia):9割を占める。
音韻処理の苦手と関係している。

・「表層性ディスレクシア」(surface dyslexia:surfaceという言い方は、チョムスキーの「表層構造」に由来するとのこと)というタイプもある。

音韻性ディスレクシアは、漢字よりもひらがな/カタカナ(の非語)の読みが困難。
日本語は大丈夫でも、英語になると問題が出るタイプはこちら。

表層性ディスレクシアは、ひらがな・カタカナに問題がないものの、
漢字に困難を覚えるタイプとのこと。
あとで「この原因は何ですか?」と質問したところ、It's a mystery(謎です)と言っていました(!!)
漢字が覚えられない悩みは当ブログの一大テーマですが、その原因が謎だとは。。

そして、大半のディスレクシアは、複数のタイプが組み合わさっており、1つのタイプだけを持っていることはほとんどない、とのことでした。

個人的に一番驚きだったのは、ハイパーレクシアがディスレクシアの7つのタイプの1つに分類されていたこと∑( ̄0 ̄;。
ハイパーレクシアは、「読字はできても意味につなげられない人たち」と説明されていました。この人たちの治療方法は解明されていないとも。
もじこもディスレクシアらしいです!なんか嬉しい(笑)
(より正確には、これも本日何度か登場していたcompensated dyslexic=ディスレクシアゆえの不足が補完されるに至ったディスレクシアなのでしょうが)


もう一つ、はっとしたのが、
「英語力=単語を読む能力(or単語を想起する能力)」とする点について。
研究者が、ひとつの単語を見せてそれを読む能力に注目するのは、研究目的でやっていることであると、明言されていました。構文力や読解力にはあえて立ち入らないと。

アセスメント(読み能力の調査)においても、1つの単語を示してそれが読めるかを見るのは、有効なことでしょう。

でも、だからといって、ディスレクシアに英語を教えるときにも、同じアプローチを使う必要はないはずです。
研究目的でのディスレクシアへのアプローチと、ディスレクシア英語教育のためのアプローチは、違うのが当然なのです。

すごく多くの教師、さらには親が、英語力=単語想起力であるかのように考えているらしいのは、本当におかしいと私は思ってます。
要は、単語テストでひどい点数をとってきたと言って悲観的になりすぎる親や教師は多いわけですが、これは間違ってます。
英語力をのばすには、ひとつの単語をぱっと見せられて、それを声に出して読む力以外にも、ディスレクシアのタイプ分けの研究においてあえて避けているという構文や読解力などいろんな能力が関わっていて、それらを強化するアプローチは(人により到達点に差はありますが)とても有効です。

そこから、タイトルの「英語力=英単語のデコーディング能力ではない」に至るわけですが、、
もちろん、構文力や読解力を先に身につけたディスレクシアは、いよいよ本丸であるデコーディング(文字を見て音にする)力の強化と向き合うことになるわけですが。
しかしその順番は、文字/音を結びつける能力→文法→読解ではなく、同時、または逆であったっていいのではないか、というのが、わたくしの立場です。



そのほか、驚いたことを箇条書きにしておくと・・・

・「音韻性ディスレクシアには、シンセティック・フォニックス、なかでもジョリー・フォニックスが効くことが明らかになっている」と、名指しで明言されていた。
ええそうですとも~

・「フォニックスを自力で学ぶことはできない。whole word(単語をまるっと暗記)のみ学ばされていると、音韻性ディスレクシアが出る。このタイプには、シンセティック・フォニックスの効果が非常に高く出る。」

・「ブレンディングは、子供にとっては難しいことである。ブレンディングに困難を覚えること(「c/a/tを足して」と指示して「キャット」と言えるか)を、ディスレクシアの指標にするほど」
よく分かります。以前わたくし、これがすらすらとできた子を、ディスレクシアでなくてアーレンと疑ったことがありました。

・「ディスレクシアは、音韻認識の障害に限ったものではない、たしかに音韻認識の困難がもっとも一般的な症状ではあるが。それを認めない人は何かを無視している。」


・全体の要旨としては、
読むという行為にはさまざまな能力(文字を認識する、単語全体を認識する、文字を音に変換する、など)が関わっていて、どの段階でつまづいても読み困難が生まれる。一口にディスレクシアといっても、どこでつまづいているかは異なる。どの段階でつまづいているかを観察することが重要である。
また、英語を/日本語を読むというのはどのようなメカニズムで行われるのか、単純であってもモデルがなければ、読み困難を理解することは不可能だ・・・と強調しておられました。



◆タエコ・ワイデル教授のお話は、先日のLD学会の特別講演とほぼ同じでした。

ご自身が提唱されている、こちらもこの業界の専門家には有名な「粒度と透明性の仮説」(文字⇔音対応が規則的な言語ほど、ディスレクシアの出現率は低い)、
また、日本語・英語・中国語では、脳の活性化している部位が異なることを説明して下さいました。

「音韻性ディスレクシアと表層性ディスレクシアの区別と、粒度と透明性の仮説は、どうつながりますか?」と質問したところ、「粒度/透明性の図は音韻性ディスレクシアについてのもの」とお答えいただきました。

「空書きは、日本語と中国語のネイティブに特有の現象。
イギリスの子供たち(非ディスレクシア)は、単語を何度も書いて覚えることはしない。
なぜなら、フォニックスルールを学んでいるのと、イレギュラーな単語があるということを学んでいるから」という話をされたときは、LD学会のときもそうでしたが、会場全体が「ほほ~」という雰囲気になっていました。
→ここを読んでいる英語教師と親のみなさん、英単語を覚えさせるためと言って、生徒や子供に何度も書かせるのはやめましょう!それよりもフォニックスルールと、それにあてはまらない単語があるんだと教えるほうが、よほど有益なことです。
(なお、今日の話によると、英語の1音節語の17%はフォニックスルールがあてはまらない、とのこと)

また、英語ネイティブの両親のもとに生まれ、日本の進学校に通い、
日本語の読み書きにはまったく問題がない(むしろ読書家)であるものの、英語の読み書きには激しい困難を覚え、学校で「英語を怠けている」と言われたAS君の話もされていました→
彼は今は立派に社会人としてやっているとのことでした。
もじこ塾にも、日本語ネイティブですが、こういう英語だけ激しくできない子は複数来ています。。。


今日お話されたお二人とも、「超一流は惜しみなく与える」を体現する方々でした!