ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2016-06-23

もじこ塾が夏期講習を行います。

もじこ塾は、明日から、夏期講習の資料請求の受付を行います。

明日の夕方に、こちら→にご案内をアップします。
受講をご希望の方は、どうぞご覧下さい。

本当にたくさんのお問い合わせを頂いています。
ディスレクシア英語教育の必要性をひしひしと感じています。
困っている方、ぜひいらして下さい。
英語が分かる喜びを一緒に味わいましょう。
でも、どうか無理強いのないようにお願いします。特に中学生の親御さん!
・・・という、相反する思いが渦巻いております^^。

本日、一定の条件を満たした方に、先行申し込みを行いました。
でも、まだ席はたくさんあります。
(メールがはねかえってきた方がいました。
自分がそうだと思う方はご一報下さい)

多くの生徒さんにお目にかかれるのを、楽しみにしています。
(その前に、今週の日曜は新潟でセミナーとオフ会があります!→
お越しの皆様、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m)

春期講習の感想をご紹介します。
すでにご紹介したものはこちら→、こちらも→

☆  ☆  ☆

春期講習では大変お世話になりました。新学期が始まり、息子は提出物・課題の期限に追われています。わかっているのに、準備が遅れる。いつもの学校生活が始まりました。本人は春期講習の感想はブログに書き込もうかな、と言っておりますが、スイッチがはいるまで行動が遅いです。今しばらくお待ち下さい~m(__)m。

保護者から見ての感想です。以前メールでも書きましたが、ある程度英語は理解できている(まったく自分なりの戦略だけど)と思うのだけど、学校の評価が大変低い。やっぱり英語はできないのだろうか、どうやって勉強すればよいのだろうかと自信がもてないところを、もじこ先生に理解できている部分をはっきり指摘していただけたことは、本人にとって自信になり、大変良かったのではないかと感じています。学校では点数から離れたところでの評価を頂ける機会はほぼ無いですから。
口頭での和訳も、頭の中で文章を組み立てることは苦手なはずなのに、結構できた、と聞いて驚きました。頭の中でイメージできていることは、比較的言葉にし易いのだと、本人から聞いたことがあります。そういう事なのでしょうか。口頭で訳することは、書くことに比べるとずっと楽だそうです。学習を進めていくヒントを頂いたように思います。
視写は大変ハードなようです。ノートや課題の制作をパソコンを使うよう移行しているところなので余計にきついのかもしれません。これをすると、こんな良いことがある!と明確な目標を持てると変わってくるかもしれませんね。

春期講習では英語をみていただきましたが、頂いた学習のヒントは苦戦している他の教科にも生かされてくると思います。あっという間の4日間の講習でしたが、学んだことをその後の学習に持続していかれるように応援をしていくつもりです。ありがとうございました。(高校生のお母様)



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本当に××はよくがんばりました。疲れていても、朝早くても通いきりました。一度も嫌だな〜行きたくないな〜と言いませんでした。東京に行くという事も相まって、こころなしか楽しそうに見えました。
また、「ディスレクシアの生徒のための」というところが、彼の気持ちを多少楽にしていたように感じました(それでも過去のテスト答案を持って行く事はかたくなに拒否されました)。そして、もじこ先生を信頼していい人と早くに認識していたようでした。
中学生の彼だったら絶対に行けなかった!このタイミングで受講できたことは、本当に幸運でした。
ただ、私が思っていた以上に読み書きの苦労は存在し、そこははっきりと現実を見たという思いはあります。そして中学時代の彼の辛さを本当にはわかってあげていなかったのだなとも思いました。
今回の講習で覚えたジョリーの読みが新学期から実感できればと願っています。
(高校生のお母様)

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ありがとうございました!!
初日は先生なので怖い方かと思って行ってみたらとてもいい人で安心しました。
二日目は独特の教え方があったようで、少しは成長したと思います。
たった3日間だったのが残念です。
また英語を教えて下さる機会があったら、ぜひ参加したいです。
ありがとうございました。
(中2)

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春期講習ありがとうございました。ぼくは、英語があまり好きではなかったけど、先生に教えてもらって少し英語が楽しくなりました。先生の教え方がおもしろかったです。東京は遠いので、また来れるかわからないけど、中学校のテストでいい点がとれるように頑張ります。
(中1)

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もじこ先生

春休みの授業、本当にありがとうございました。
関係詞のことをいちから一つ一つ丁寧に教えてもらえたから
今までちんぷんかんぷんだった関係詞がわかりました。
 
春休み明けの実力テストに関係詞が出たのですが、もじこ先生が「whichは先行詞がものでSかOがないときに使う」といったように細かく教えてくれたので、テスト中もあせらずしっかり考えることができました。
でもやっぱりwhatの使い方などいくつか忘れてしまっているものもありました。
だから時間があれば先生ともっと一緒に問題を解いて知識を定着させたかったです。

また日頃の英単語の覚え方や集 中力の持続が難しい私に、雨の音を聞きながらしたら集中力が保つよ、
とたくさんのアドバイスをもらえてうれしかったです。

今までもじこ先生のように私のことを理解してくれる大人が家族以外にいなかったので
休憩中の話もすごく楽しかったです。

また夏休みに先生の授業を受けに行きたいと思っています。
現代文の本もありがとうございました。
2年生になってからすごく忙しくなってまだ読めていませんが、これから読みます。
本当にありがとうございました。

もじこ先生の役にたつかわかりませんが、実力テストの画像も送ります。
平均点の37点を越えることができまし た。
でも恥ずかしいのでこれはみんなに見せないでください。
(高2)
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もじこ先生と会って.
ママとオーラがそっくりだと思いました。
反応や喋り方がにています。

××女子大の入試問題を解いて。
長文の良いとき方を教えてもらいました。1つまえの文章から読みます。すごく簡単にできました。
単語覚えるとき語源から教えてもらいました。それでいくつかの単語を覚えました。
help のあとのo,c,
whileのあと反対の言葉
in のあと名詞
文法がよくわかりました。
××女子大は素敵な問題を出すなと思いました。

教室から帰りたくありませんでした。家にもじこがいるといいなと思いました。

最近長文がどんな内容かワクワクしながら読んでいます。
本命の大学の長文も解いてみました。15問中12問できました。
内容がわかると英語を読むのは楽しいです。
(高3)

☆  ☆  ☆

もじこ塾にはわずかですが、奨学金制度があります。
(ご寄付を下さった方、ありがとうございます!!)
ディスレクシアだと気付いてしまったけど親に言えない、言ってもわかってもらえないだろうと思う、でも、もうちょっと勉強を続けたい・・・そんな人が対象です。
ここをご覧の中高生・大学受験生の方で、奨学金での夏期講習受講を希望される方がいらしたら、申し込み時に「奨学金希望」とお知らせ下さい。

2016-06-16

【翻訳】ディスレクシアの子の音韻認識の育て方

homeschooling with dyslexia(ホームスクーリング・ウィズ・ディスレクシア)
というサイトの翻訳を呼びかけたところ、
音韻認識の教え方と、サイトワードの訳し方の記事を、
「まるはな」さんが訳して下さいました!
ありがとうございます!

音韻認識・・・先日横浜で行われた
「アジア太平洋ディスレクシア・フェスティバル」のシンポジウムでも、
「フォニックス以前の問題として、オトをとらえることのできない子がいる。
多感覚法もフォニックスも効果がない、音韻認識が弱い子たち。
日本ではディスレクシア英語指導法は皆目分かっていない、実態も分かっていない。
こうした音韻認識が弱い子たちへの指導法に至っては、まったく分からない」
と断言されていました。

個人的には、英語についてはざっくりした音韻認識を責めすぎずに、
"言葉の音楽"を重視して、どんどん先に進むべきだと思っていますが、
ことはそんなに簡単ではないのでしょう・・・?

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ディスレクシアの子への音韻認識の教え方
原文はこちら→

●音韻認識の教え方
ディスレクシアがあってもなくても
音韻認識を学ぶことは、読みの学習の基礎となる。

●音韻認識とは
言葉が小さな音の集まりであることの認識のみならず、
音をバラバラにしたり、入れ替えたりできることを意味する。

●音韻認識の重要性
〇音韻認識は読みの学習が成功するかどうかの指標になるもの
〇音を分割したり合成したりすることは、
文字を音にする能力や読んでいるものを理解する能力を高める。
〇また、フォニックスは音韻認識の上に成り立つ

話し言葉での音を理解できて、それを操作できるのならば、
書き言葉でも同じようにできる準備が整ったということだ。


●音韻認識を調べる
以下のようにして子供の音韻認識のレベルを調べることができる
①お手本の語と同じ音で終わる語のリストを作らせる
②例示した語を、初めの音、真ん中の音、終わりの音に分けさせる
③語の中にある音節の数を数えさせる

以上の3つのことが自信をもってできれば
フォニックスへの準備ができているということ。

●音韻認識を教えるヒント
ゲームのように楽しくやること
1日10分でいいので毎日やること
○子供が嫌がったらやめること
○ディスレクシアの傾向のある子はこの練習に時間がかかることがある。
1年かかることも珍しくない。
○音や語は、子供が聞く必要のある回数繰り返すこと
○折に触れて音で遊べる方法を探すこと

●音韻認識の教え方
○韻
音韻認識を教えるもっとも簡単な方法には、韻を踏む言葉を使うものがある。ゲームのように楽しくやること。子供が嫌だというサインを出したらやめて翌日にまた行うこと。毎日数分でびっくりするほど効果が上がる。

☆韻を聞く
例:「この言葉とこの言葉に同じ音があるね-」などと言って韻が出てくる本を読む。

☆韻を区別する
例:3つの言葉を言って、最後の音が同じでないものをあてる。

☆韻をふんでいる文を作ってみる。
例:「今言った言葉と同じ音で終わる言葉を言ってみて」
  「これから言う文が同じ音で終わるように言葉を足してみて」

○音の合成、分解
音に慣れたら、語の中の1つ1つの音を区別できるようになる。まず初めの音、終わりの音、真ん中の音、とすすむ。音を分解できるようになったら決まった音で始まる(終わる)
名詞に移る。

以下は初めの音についての例だが、終わりの音や、やや難しい真ん中の音にも応用できる。

☆音を認識する
同じ音で始まる語を3つ言う。子供にどんな音で始まっているかたずねてみる。

☆音を区別する
同じ音で始まる2つの語と違う音で始まる1語を言う。どれが仲間外れかたずねてみる。言葉を返してくるのが難しい場合は、初めの音を強調する。

☆音をつくる
例:「/f/で始まる言葉を言ってみて」

○音節の合成と分解
子供が1つ1つの音を意識できるようになったら、言葉を音の塊に分けたりくっつけたりすることに移る。

☆音節の合成
音節で区切った語を言って、それがどんな単語になるか答えさせる。

☆二つに区切った単語をくっつける
語を2つに分けて言い、それがどんな単語になるか答えさせる。

☆音素の合成
語を音素に分けて言い、それが全体でどんな単語になるか答えさせる。

※楽しくやるのを忘れずに。時々子供にも問題を出してもらおう。

○文の分解
短い文を言って、単語の数だけ手をたたく。見本を見せるとわかりやすくなる。

☆音節に分ける
音節ごとに手をたたく。

①見本を見せる
②お手本と同じ単語で同じようにやらせる
③こどもだけでやる

☆単語を前後に分ける
単語を前後2つのパートに分ける。
見本を見せて、子供が簡単にできるようになるまでいろいろな語で試す。

☆音素に分ける
単語を音素に分けて言わせ、いくつの音が聞こえたか子供にたずねてみる。

音韻認識を教えるのに参考にするとよい本: all about reading
(翻訳おわり)
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ところで音韻認識の弱い人と言えば、
私の父(75歳、引退した建築家)は音韻認識の弱いディスレクシアだと思います。

私がもの心ついた頃から、私の家族は
「父(ディスレクシア)の珍妙な受け答えに母(アスペ)がキレる」の繰り返しでした。
今は、うちの子に「おじいちゃんって天然だよね~」と言われています。

父の弱い音韻認識は、成長とともに多少は向上したのでしょうが、
25歳くらいをピークにごくゆるやかに低下を続けており、
自分が聞き間違いが異常に多いことを自覚して、いろんな戦略を立てる以外、
これといった解決策はない気がします。
(父はメモ魔、あとiPhoneで毎日何十枚と写真を撮る写真魔です)
上のようなレッスンは、父にはちょっと無理な気が。。
年齢的なものもあると思いますが、
次々と口頭で指示したところで、それを理解する様子が想像できません(汗)

ところで、異邦人として生きることは、
音韻認識の弱さを悟られずに生きる、有効な手段だと思います。
(父は、仕事人生の全部が海外、それも先進国での仕事はほとんどありません。
なので、珍妙な受け答えをしたとしても、
"外国人だからそんなもの"というスタンスでやってこれたのだと思います。)



メモ魔でディスレクシアな父(よく見ると「材」が「村」に(汗))
大人になって「書いて覚える派」になるディスレクシアは、驚くほど多いです

話がずれました。次の訳です。まるはなさん、引き続きありがとうございます!


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ディスレクシアの子へのサイトワードの教え方

原文:こちら→
                       
サイトワードとは、ルールで読めない、見て覚えることが必要な単語
 ディスレクシアの人は正しいやり方で読みを教わるのが良い。
 インターネットで探したが、ディスレクシアの人に効果的な教え方がほとんどなくてショックを受けた。
 以下は多感覚を用いた素晴らしい学習法の例である。 

ディスレクシアの子どもにサイトワードを教える方法
 この記事の後のほうに、私の子どものBen がどうやってサイトワードを覚えるのかをやって見せているビデオがある→Ben はこの方法を見つけるまで何週間やってもサイトワードが1つも覚えられなかった。このやり方を始めてから、彼はサイトワードを簡単に覚えるばかりでなく楽しく学ぶようになった。Dyslexia Training Institute の先生方に感謝。
 
やりかた
① 
サイトワードをフラッシュカードに書く。
子供に単語を読ませる。
わからない単語であれば読み方を教える。

鉛筆やペンのおしりでカードの文字をなぞりながら文字の名前を言う。
鉛筆やペンのおしりでアンダーラインを引きながら単語を読む。
これを2回繰り返す。

指を使ってテーブルに単語を書く。
2でやったのと同じように文字を書きながら文字の名前を言い、
単語の読みを言いながらアンダーラインを引く。
覚えそうになっていたら記憶をもとに書けるように、カードはひっくり返しておく。
これを2回繰り返す。

自分の手で反対側の腕をたたきながら、文字の名前を言う。
腕をなでおろしながら(左利きならなで上げながら)単語を言う。
(訳者注:ビデオを見るとよくわかります→

できるのであれば、ノートにその単語を書く。

単語を見て読むということが5~6回続けてできるようになるまで、練習する。
 

☆ビデオについて
文字を書くときは正しい書き順で書くのが理想的ですが、このビデオの中でBenは時々逆から書いたりしています。私たちは書き順について取り組んではいますが、サイトワード学習の中では書き順を直すことはしていません。

●サイトワード学習開始にあたって


できれば子供たちに勘で読む習慣をつけさせないため、習っていないサイトワードの出てこない教材を使ったほうが良い。

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サイトワードについては、どこで読んだか忘れましたが
フォニックス読みと発音通りの読みの両方を覚える」のは、
ディスレクシアには正しい方法だそうです。
(「ウェドネスダイと書いてウェンズデイ」など)
このことと、上の覚え方を併用すると、日本人学習者にとってはよさそうです。

2016-06-11

もじこ塾特別セミナー「出来るが先、知るは後、B.B.メソッド」

16/06/18 1ヵ所訂正しました。難波先生、ありがとうございます。

BBカードの考案者、難波悦子先生(セルム児童英語研究会)をお迎えして、ディスレクシア英語指導にBBカードをどう取り入れたらよいかを考える、スペシャルなセミナーを行いました!

難波先生、もじこ塾のセミナーにご登場下さり、本当にありがとうございます。
BBカードとその理念をしっかりと学び、ディスレクシア英語指導に生かしていくことが、感謝の気持ちをお伝えすることになると思っています。

今回は、参加者のY. I.さんが、講演録を作って下さいましたー!!
ありがとうございます!!
こちらで取っていたメモから少し補足して、ご紹介します:

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冒頭、もじこさんより以下の紹介がありました。
「本セミナーが開催されるきっかけは、20163月に東京で開催された英語教育UD研究会で、難波先生ともじこがそれぞれプレゼンテーションを行い、難波先生から、「ディスレクシア英語教育は大から小であるべき」がBBカードの理念に一致しているとのご指摘を頂いたこと。今日は、難波先生に、3月のプレゼンと同じ内容をお話していただき、ディスレクシアの子供の英語教育について悩みを抱えている参加者の皆さんと共に、私(もじこ)自身も多くのことを学びたいと考えている。

 本セミナーの準備として、参加者の皆さんが抱えている悩みなどについて難波先生にメールでお伝えし、お返事もいただいている。難波先生のメールには、深い言葉が溢れているので、読みあげる形でご紹介したい。『これまでの日本の語学学習法は、易から難へ、そしてspoon feeding(スプーンで口に入れてあげるような方法)で、やってきた。その結果として、教師が子供たちを見て言うことは、英語が聞き取れない、言えない、読めない、書けない、といったないない尽くし。しかし、これは教師の側から見ただけのこと。教師が教えれば教えようとするほど、子供は学習の緊張から逃れられない。子供を学習の緊張から解放させてやることが重要。』 
また、戦後の英語教育は、Jack and Betty以降、70年間変わっていない。なぜなら、ALTが入っても、オールイングリッシュ形式になっても、"教える"という点は変わっていないから…とも。
ご紹介はここまでにして、難波先生、よろしくお願いします。」

☆  ☆  ☆

難波先生のご講演の趣旨は次のとおり。

1.BBカードメソッドの基本は「教えない」
「教えない」とは、「生徒がすでに持っているものを基に、気づかせる」ということ。
「生徒がすでに持っているもの」とは、英語の知識ではない。わからないことの意味を推察する力とか、羅列されたことばの中から自分なりに規則性を見つける力など、その子がすでに持っている能力のこと。
子供を観察していると、それぞれ強い力が異なる。Visual(視覚能力)が優れた子、Auditory(聴覚能力)が優れた子、Kinesthetic(身体能力)が優れた子など、それぞれ異なる。その子が得意な力を生かしてやることが大切。

2.BBカード誕生のきっかけ、理念
もともと、BBカードが誕生したきっかけは、私(難波)の英語教室にいた、言い方は悪いが、箸にも棒にも引っかからないような子供たちが楽しんでできるようにと考えたこと。
教師が教えようとすればするほど引いてしまい、自分の殻に閉じこもろうとする生徒がいる。このような子に対し、どうするか。

「サ・シ・ミの法則」というのがある。50年前に石神井中学の先生が言ったこと。
学校の1つのクラスのうち、上位3割(「サ」)は、教えなくても自分で規則性を発見して学んでいく子供、
その次の4割は、教えられて何度も練習すれば身についていく子供(「シ」)、
残り3割は教えられて何度も練習しても、残らない子供(「ミ」)となる。

言語学者のクラッシェン(Krashen)が言っているように、ことば(言語)というものは意識的な学習によっては身につかない。特に、EFL環境(英語が外国語である環境)にいる日本の子供たちは、学習によって英語を身につけるのではなく、自然に気が付いたらできていた!となるのが良い。そのためには、現在、学校で教えているような文法事項などの明示的知識をいくら教え込んでも、自分から発話する瞬発力は出てこない
反対に、BBカードで遊んで、はじめからセンテンスを言えるようになっていれば、子供は必死に覚えなくていい。ただ言うだけで良い。「おまじない」も、カードの「センテンス」も、言えるところだけで良い。

3.実際にBBカードで遊んでみる
それでは、実際に、本日の参加者の皆さんに4人一組でチームになって、BBカードで遊んでもらいたい。
まずはダイヤのカード16枚を使った「基本ビンゴ」。
(「shuffle your cards」と声かけし、4×4にカードを並べてもらう。
カードを配り、並べてもらっている間、「おまじない」として、不規則動詞の活用を先生が言い、生徒にリピートさせる。take-took-taken-takingなど。
配り終わったら「おまじない」も終了。「おまじない」の意味は一切解説しない。)

私(難波)がセンテンスを言ったら、まねして、子供の気持ちで、どのカードか考えてほしい。
(先生が"Lucy Locket lost her letter."と字札を読み、生徒役は絵札をあてる)

子供がわからなくても「どれかな?」と言って考えさせる
全部はわからなくても、letter という言葉で推測できて、あてられる子がいる。あたったら「ピンポーン!」「あたり!天才」、外れたら「ブッブー!」、それだけ。「できた/できない」ではなく「あたり/はずれ」だけ。楽しめばよい。
その過程で、「Lucy Locketちゃんは、何をなくしたって?」(「手紙」)「そうだね、letterをなくしたんだね」というような「意味をとるための質問」をすることで、letter という単語を知らない子でも、音と絵を見て、「letter =手紙」というのが、その子の中で結びつく。
自分からピックアップするように持っていく。

 1つのセンテンスの中のすべての語を、最初からわかる必要はない。あいまいさに慣れていってほしい。
「あいまいさ」に耐えられる力をつけていくことが大切。
あいまいな状態でもセンテンスを言えることが、後々、文法を学ぶ時に、帰納法的に納得できることにつながっていく
このあいまいさに慣れさせるため、B.B.カードは、いちばんやさしいダイヤのカードからでも、機能語(前置詞など)を多用したセンテンスや、過去形、未来形、現在完了形などいろいろな時制のセンテンスを入れている。
B.B.カードは全部で64枚あるが、これで英検3級レベル(中学校終了程度)の文法事項をすべてカバーしている。意味がわからなくても、言えるようになればよい。

(ここで会場から質問。「カードの意味を教えてほしいと言われたら?」
難波先生の答え「『わかったら教えて』と言います」)

文法を気付かせるとは:
Ken  keeps me waiting.
Kate keeps me waiting.
Ken and Kate keep me waiting.
と言えば、子供たちは気付く。

Happy Henry has gone to Hawaii.で、
「Happy Henryちゃん、どこ行ったかね?」(「ハワイー」)
「じゃあ、Happy Henry が北海道に行ったら?」
「(Happy Henry has gone to Hokkaido)」

 はじめから、子供がすらすら英語のセンテンスを言えるわけがない。何度も、ビンゴやゲームなどの遊びを通じて、絵と音に触れていき、反復を自然な形で繰り返すことで、潜在意識の中に、絵と音を内在化させることができていく。
そのためには、手間暇をかけていかなければならない。ことばを覚えさせたいなら、手間暇をかけないと無理。

特定のグループが勝てるよう、読む字札を調整することも。これはほめるため。
こういうことのできるゲームなら、できる子とできない子の垣根を作らない。

さらに遊び方の紹介。
・神経衰弱
(例文を聞いて、対応する絵札を表にする。正解した人、つまり対応する絵札を表にすることができた人が、次は例文を読みあげる役になれる)
大人はテキトウな札を選ぶが、子供は自分がビンゴになるような絵が返せる札を読む。このとき、子供は右脳と左脳を使っている。

・ただ言えるだけの例文をもとにした遊び。
(子供が64文をすべて言えるが、意味はわかっていない状態で、
例えば、Gentle Giraffe looks at George.に対し、
先生が、Gentle Giraffe likes to look at George.と言い、生徒も繰り返す)
2~3枚繰り返すと、likes toが入る。何をやっているか分からないまま、言えてしまう。

教えることに熱中すると、「覚えた/覚えていない」で判断してしまう。
だが「言えればいい」なら、いつの間にか覚えてしまう。

子供が言えるようになった時点で、意味を聞く。
「わかって、納得して、覚える」だと、わからないものは覚えられない。

スプーンフィーディングの弊害。通常の反復では、I amばかり反復して、次にYou areばかり反復するという方法をとる。そうではなく全体で入れる、つまり、is/are/wasを同時に入れる。未来形などもこの方法で入る。手間暇はかかるが。

「なんだか分からないができる」は英語嫌いをなくす。

4.BBメソッドの基本三原則
BBメソッドの基本三原則は、
(1)全体から個へ、
(2)基本は遊んで学ぶ(学習ではない)、
(3)いい加減が好い加減(言葉の曖昧性に耐えられる力が生徒自身の「気づき」につながる)、というもの。
これによって、特に小学校段階でBBメソッドを取り入れると、
(1)反復というルーティンワークを子供に悟られずに行える、
(2) 「遊び」という形式をとるため、できる子とできない子の垣根を作らない、間違いを恐れない、
(3)英検3級レベルの64センテンスが身体にしみこんでいることが、中学以降の英語学習のよりどころとなる、
(4)文法については中学校で帰納法によって気づける、
というメリットが生まれる。

5.BBカードの学習段階
BBカードの学習段階は、
1段階が「絵と音の一致」
2段階が「音と意味、音と文字の一致」
(先生の言葉の模倣と反復を繰り返すことにより、いつのまにか記憶に定着する)、
3段階が「置換(substitute)と変換・転換(recast)」
(転換とはlikes toを加えることなど。recastでは訂正を大げさに行わないことが大切。子供の発言をそのまま受け止めてからさりげなく言い換えれば(「takedね、took」)、子供はこっそりと正解を学ぶ。
難波先生から、訂正のご依頼がありました。
たいへん勉強になるので、そのままの形で掲載いたします。
recastでは子どもの間違えた表現を先生が繰り返すことはしません。
ですから、「そうね。」といったん引き受けて、間違えた子に向けてではなく、全員に「took」とリピートを促します。

こうすると、間違えた子は自分の間違えたことに気づきつつ、先生が聞き間違えてくれたことで恥をかかなくて済みます。

しかし、過去には「先生、○○ちゃんは間違ったこと言ってたよ」などと小さな親切(?)を発揮してくれる子もいたりしましたが・・・。そんな時でも「あら、そう?」で済ませます。

「子どもの間違えを先生が繰り返さない」はrecastの鉄則(?)と言ってもいいかもしれません。


4段階が「選択(類推による作文)」。

 第3段階の置換とは、主語や目的語を置き換えることにより作文の練習となる。変換は時制を変えること、転換は基本文をもとに違った意味の文に変えていけること(例:Betty Botter wants to buy some butter. She likes to buy some butter.)である。

 この段階ができたら、第4段階の「選択」が可能となる。
ここでは「BB作文」を行う。(2枚のカードの、主部と述部を合成した文章。Betty Botter has gone to Hawaii、The flying rabbit will get to the forest to buy a cake.など。)そこから文型練習、自由作文、会話など変形練習を含む文法練習が可能となり、自分で発話、作文することができるようになる。

 BBの反復と学校の反復の違い。学校とBBでは、反復の回数は同じだが、BBの方が広範。学校では、I likeならI likeばかり反復し、その後二度とI likeの反復に戻ることはない。

インプットの重要性。BBの後は本読みと、先生とのインタラクションが大事。そしてインタラクションのためには、核になるものが必要。それが64文。
外国語環境になくとも、この核があれば、そこから広がっていける。

小学校でBBカードを導入する利点。
(1)ばらつきのない小学校英語教育が可能(学校外での学習歴に関係なく、みんなで一緒に楽しめる)
(2)英語の専任でなくても使える。CDがあるから。学校の先生もCDを聞いているうちに覚える。
(3)帰国生の子に読み手になってもらうなど、できる子も退屈させない。
(4)英語の素地を作れる。リズム、イントネーション、アクセント、リエゾン。文字。準動詞までの文法。そして作文まで。
BBカードは遊びだから、間違いも許される。間違えたくない環境だと挑戦しなくなる。その姿勢だと英語は苦手になる。いいかげんでOK。それでも、だんだんもやもやがはっきりしてくるもの。

多読vs.訳読。
多読によって本が読めると、英語が好きになり、自力で英語力を高めていける。つまり自己教育力がつく。

BBカードの目標。
難波先生の目指す、BBカードで遊びまくった子供の小学校卒業段階での目標。
最低段階は、64のBBセンテンスを自分で言えて、意味がわかること。
その次の第2段階は、センテンスの変換、転換ができること。
最終目標である第3段階が、センテンスを自分で作れること(自発的な作文と発語ができること)。

6.ビデオ鑑賞:
最後に、実際の子供たちの様子をビデオで見てほしい。(ビデオ鑑賞で、講演は終了。)

☆ ☆ ☆

質疑応答(主なもの)
Q. ディスレクシアや学習障害のある子でも、BBカードを通じてセンテンスを言えるようになったとしても、どこかの段階で、言えるようになったセンテンスを「読む」という段階が必要になると思うが、どのようにしたら読めるようになるのだろうか。(もじこ)

A. 自分(難波)は、これまで、ディスレクシアのお子さんを指導した経験はないので、ある北海道の先生の手記(LDやディスレクシアのお子さんの指導に関するもの)を参考として配布した。
ただ、BBカードに遊びを通じてセンテンスを諳んじられるようになった子どもでも、字カードを見て、すぐに読めるわけではない。最初は絵カードと字カードの番号でどの文が分かり、語を図形的に捉えて、全体語形的に読んでいる。ただ、それを繰り返していくことで、子供自身が「読める!」という自信をつけていく(途中で番号をシールで隠すことも)。


Q. 文字学習を始めるタイミングは、いつになるのか?

A. BBメソッドでは、最初にアルファベットは教えない。ただ、例えば1時間のレッスン全部がBBカードというわけではなく、最初は英語の歌を歌ったり、Simon Saysのゲームなどをやったり、英語の音やリズムに慣れる時間はとる。その中で、自然にABCソングなどを覚えていく。BBカードの64センテンスを完全でなくても覚えて、言えていたら、フォニックス的な遊びをやって、音と字の一致を図っていく。たとえば、Betty Botterのセンテンスに”b”の音がいくつ入っているかな?と聞くゲーム等を行う。


Q. BBメソッドでは、フォニックスをやるタイミングがかなり遅い、というかアンチ・フォニックス的な立場だなと感じたが、どの段階でフォニックス的な指導をするのか?(もじこ)

A. 実は、フォニックスはいつから、どこから、入れてもよい。フォニックスの規則性を教えたとして、自発的な発語につながるわけではない。ことばは規則ではないから。まず、音を入れておいて、音の認識ができなければ、ダイヤのカードのセンテンスの韻を踏んでいることの規則性に気づくことはできない。
Betty Botter bought some butterに対し、How many B sounds are there?(いくつBの音が入っている?)と聞くが、正解するには年月を省いてはならない。せっかちはいけない。

BBカードを説明するにあたり使っている枕詞がある。それは「だまされたと思ってやってみて下さい」(会場笑い)。
覚えられる子はすぐに覚える。座っていられない子、飽きっぽい子は、ただ教室にいればいい。そこにいれば、そのうち覚えるから。


Q. 難波先生の著書(下記、参考文献1.)によると、10週間で64全てのセンテンスを入れる必要があると書いてあるが、実際に、レッスンで使っていると、とてもそのスピードで入れることは難しいと感じるが、どうすればよいか。

A. 最初の10週間で、64のセンテンスを完璧に覚える必要はない。あくまで、64のセンテンスに「触れさせる」のが大切ということ。
64のセンテンスに、英検3級レベルまでの基本文のエッセンスが詰まっているので、早い時期に触れておくことで、英文のあいまいさに耐えうる力をつけさせることが可能となる。
BBカードは、ダイヤは頭韻で、ハート、クローバー、スペードと、だんだん言いにくくなっていく。だが、これが易→難の順だと考えるのは思い込み。4種類、すべて同じように扱ってよい。
順々に扱っていく途中で教室に新しく入会する子もいる。それもかまわない。たいていの子は、自分が入会したときに扱っていた種類(ハートなど)が一番好きになる。


Q. BBカードは、ビデオに出てきた通り、下は3歳から可能だと分かったが、上は何歳くらいまでを想定しているか?

A. BBカードを製作したときは、小5の子を念頭に置いていたが、広まるにつれ、だまされた人(笑)の中には、下は3歳くらいから使う人も出てきた。この年齢の場合は、字カードの使用は想定していない。また、BBカード以外の読み聞かせや歌などもたくさん行う。字は学童期から。


Q. 中1ショック対策として、BBカードをどう使えるか、何か提案はあるか。

A. BBカードの使い方は、年齢を問わず同じ。まずオトを聞かせ、言えるようにすること。
授業を捨てる覚悟が必要かもしれない。

もじこ:学校のテストでは習熟度がはかられるわけだが、ディスレクシアだと、どうしてもそのペースに合わない。だが、目の前のテストができるようになりたいのか、それとも英語の運用力を身に付けたいのか。BBカードは後者を可能にしてくれるのだから、学校のテストは割り切る覚悟が必要、なのかもしれない。

(参考文献)
1.難波悦子『続・カードで遊んで英語大好き!―「B.B.カード」活動集』(東京図書出版会、2007年)
2.和泉伸一『「「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育』(大修館書店、2009年)

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難波先生、ありがとうございました!!

出席者の感想より:

◆先生のやることは「教えない!」そのかわりに「考えるきっかけを仕込む」ということがとても勉強になりました。

「つみあげない」「教えない」にまず衝撃を覚えました(汗)。英語は勿論、他の教科も基礎からやって、コツコツと覚えてきましたから…
他の教科はともかく、英語に関しては、結局聞くのも話すのもできないし、従来の英語学習ではまず親である私が挫折感を抱いています。挫折感の理由も、今回腑に落ちました。「英語のあいまいさを許容する」は自分はとても苦手だし、「間違えたらはずかしい」もとても根強くあります。英語が苦手な理由はその辺りなんだとわかり、ディスレクシア要素のある子供には、BBカードで、覚えない英語のスタートをさせてあげたいと思いました。

◆ディスレクシアかも?な生徒さんが何人かいて、悩んで参加させて頂きました。教えずに"あいまいさ"を残したままゲームをするというのは目からウロコでした。
BBカードは、正直ハードルが高いかな…どうかなと迷い中ですが、今日のセミナーはたくさんのヒントを頂け、とても勉強になりました。ありがとうございました。

◆マニュアルありきのレッスンを、渋々ながら受け入れて指導する身には、素晴らしく目新しく新鮮な内容でした。"だまされて"みようかしらと思いました。

教えないで遊びのなかで、身につけさせる。全体を覚え、部分にうつる。定型の子たちにも、もちろん大切なことだと思いますが、ディスレクシアの子たちにも非常に助けになるメソッドだと思いました。
ただ、やはりディスレクシアの子にとって、一番の難関は、正確に読んで書くこと。この部分は、BBカードのその先で、これから考えていかないといけないのかなと思いました。とりあえず導入としては非常に有効だと思いますし、定型、ディスレクシア関係なく、みんなで楽しんで遊べるところが、すばらしいですね。

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もじこの感想

「ディスレクシア英語指導は"スモールステップ"が鉄則と言われるが、BBカードはその真逆のアプローチ。この2つにどう折り合いをつけるのか」という質問を事前に頂いており、私もずっとそのことを考えながら拝聴しておりました。

語学学習は、全体像・・・その言語の音が響いている様子を目の当たりにして、その言語の音楽(と私は呼びますが、リズムやイントネーションを含めたリアルな会話の世界)に少しでもひたることがすごく重要で、スモールステップはその後に行うべきものだと、今は考えています。
ジョリーフォニックスにしても、道村式漢字カードにしても、言葉の音楽に触れていることが前提で(前者は英語、後者は日本語)、それなしでいきなり取り組むと、ディスレクシア的にはいくらスモールステップでも、苦しいものになるようです。
そういう意味で、BBカードは、"言葉の音楽"を教室に作り出すことができるという点で、画期的な教材だと感じました。

難波先生の生徒への声かけ自体は、とても、とてもスモールステップです。
正解を全部与えず、本当にちょっとした訂正だけで、そこから生徒自身に考えさせます。この声かけの仕方は私も、もじこ塾春期講習や予備校の授業ですでに取り入れており、生徒がすごく主体的になると感じています。

一方、やはりディスレクシア的には、ある種のことをスモールステップで"教える"ことは不可欠だろうとも、今回の講演を聴きながら思いました。ディスレクシアは「サ・シ・ミ」の「ミ」のさらにどん底の子たち、中学3年間英語の授業を受けても、theが読めないこともある子たちです(実際にいました)。こういう子には、ある部分は"気付かせる"のではなく"教える"ことが不可欠で、この部分にいつまでたっても自力では気付けないことが、学習障害と呼ばれるゆえんかも、、と思いました。

数人のディスレクシアの中学生を教えた経験では、「今から私が教えることが分かれば、こういうことができるようになるよ」と見通しを示せば、ディスレクシアなら理詰めでの文法説明も、なかなか覚えられないフォニックスも、"教える"ことに頑張ってついてきますし、むしろ教わることを望んでいるように思います。
・・・と質疑応答で申したところ、「もじこ先生は努力できない子を見たことがないのでしょう」と難波先生からご指摘を頂きました。
これは深い!!以来、ず~っと考えています。で、今思うことは・・・
「はい、私がこれまで出会ってきたディスレクシアの生徒は全員、努力できる子たちです」
ディスレクシアの子は、誤解を恐れずに言えば、原則として努力家だと思います。小学校入学と同時に「なんでみんなそんなに読めるの?」と密かに焦ったり、「書き取りの宿題が終わるまで居残り」といった仕打ちを受けたりしていれば、自然とそうなるでしょう(ノД`)。天然や多動のせいで努力家に見えないケース(笑)もあり、また努力の到達点は知能によって異なるでしょうが、少なくとも純粋なディスレクシアは努力する人種だと私は思っています。
ごく少数、10代前半で、勉強する姿勢(→文字通りの)ができていない子はいましたが、それは体幹が整えばずいぶん変わると思います(しかしこれは、非ディスレクシアにも言えることかもしれません)。

2016-06-02

道村静江先生が初めて、保護者向けセミナーを行いました。

道村式漢字カードの使い方を、考案者の道村静江先生自らが解説する
セミナーを行いました。
全国を飛び回って普及活動を続ける先生ですが、
保護者向けに話をするのは、意外にも初めてとのこと。

ひとたび口を開いたら、道村節の圧倒的な勢いが会場を覆い尽くす!!!!
予想通り、ものすごい気迫とパワーに満ちた道村先生でした。

皆様の感想もそのことを物語っています。ありがとうございます:
◆とてもエネルギッシュな道村先生のお話に引き込まれました。学校の内部のこと(現場のこと)をよく知っていらっしゃる先生だからこその具体的な注意ポイントを教えていただき、今ひとつ使いこなせていなかったカードの効果的な使い方がよくわかりました!
最低限の努力は必要で、その部分は徹底的にやらせる覚悟が必要というお話は、強く沁みました。親は覚悟とユーモアが必要ですね!
◆カードを購入しましたが、ついつい今やっている宿題と連動させてカードをやっていたらなかなか進まず、今は休止していました。
やはり2、3年生を徹底してやろうと、私が楽しんでやろうと心に決めました。というか覚悟を決めました。
先生のパワフルかつ楽しい説明に、まず私がグイグイひきこまれました。いいきっかけをありがとうございました。
「この子の親であること」「この子を社会に(この子なりの)一人前にして出すこと」の覚悟を先生から目覚めさせられたような気がします。
◆漢字カードの使い方のポイントがよく分かりました。勉強嫌いで、今までカードを使うのを嫌がって使えていませんでしたが、先生のように、テンポよく元気に楽しくできれば、本人のやる気が出るのではないかと思いました。
親の私が楽しくやってあげようと思います。 
◆…日々の学習に追われ、復習が出来ずにいましたが、改めて、戻ることの大切さ、現在小3でこのメソッドに出会えたことが、とても幸運だったと思いました。

まとめると、
「最低限これだけは」を見極めて、それだけは徹底的に習得。
教える側が心から漢字に興味を持つ。
2~3年の漢字(の部品・部首)を覚えれば、その後はその組み合わせで覚えられる。

以下、当日の道村先生のお話です。

☆ ☆ ☆

道村式漢字カードは、盲学校の子に漢字の字形と音訓読みを面白く印象づける方法として、たどりついたもの。
このカードを使うと、ほとんどの子が楽に覚えられるが、なかにはカードを見て何度も書いて覚えている子がいるらしい。
その使い方は間違っている。書いて覚えるのではない。
これから話す方法には根拠がある。その方法で進めてほしい。

~ ~ ~


1年生の40の基本漢字は書けるように。
最終的には、漢字を書けるようになるのが目標。でも書く練習は最小限にしたい、というのがこのカードの立場。

1年生の基本漢字40字(日、田など)。ここはしっかり書けるように。

また、11の部首・部品(気の外側、六の上など)も。
道村式カードでは、これらは初出の時は、非常に細かく丁寧に教える。
※目の見えない子が漢字を分かるようにするのが目標なので、
それはそれは懇切丁寧です。[詳しくはカードで]
※ディスレクシア的には、あわせて「体を大きく使う」と良いと思います。
(飛び上がるような巨大な空書き、新聞紙に書くなど)
唱えるのに加え、体を使うという多感覚式です。
ひとやね(金の上)は「屋根なんだからもれちゃだめ」などと言えば、子供は面白がってくっつけるようになる。腑に落ちる教え方を。
※先生は、小学生がみたら絶対に笑いそうな身振り手振りを交え、
体全体を使って漢字を教えていきます。先生が率先して多感覚(笑)
「笑わせながら関心を引く」「体全体を使って語る」 。カードに書かれていないですが、教え方の大事なポイントです。
※これもカードには書かれていませんが、先生は1つの漢字を教えるのに、部首の由来や語源も、すごく生き生きと説明します。ストーリー性抜群です。それらは『視覚障害者の漢字学習』という本にまとめてあるとのこと。漢字辞典なども参考になると思います。
皆様からお寄せ頂いた話を総合すると、道村式漢字カードに書かれていること(部品を唱える)だけでは覚えられない場合、こうした由来をストーリーとしてたくさん語るのが、どうやら効果があるようです。

「青の上」(最初の4画)も、「あおのうえ」という部品にすることで、
一度「青」が書けるようになれば、子供は「何本だっけ?」と迷わなくなる。
これをさらに「よこ・たて・よこ・よこ」と分解すると線構成になってしまう。
「既出の部品を活用して、新出の漢字を楽に覚える」これも道村式漢字カードの大きなポイントです。
~ ~ ~

ひらがなとカタカナを同時に教える
教科書では、小1の1学期はひらがなの練習。9月から漢字の練習が始まる。
カタカナの練習も、夏休み明けから。この時期は学習意欲が低下しているので、インプットが悪い。
その結果、6年生になっても、カタカナが読めるが書けない子がいる。

カタカナの多くは、漢字の部品になっているので、きちんと覚えたい。
そこで、ひらがなとカタカナを同時に教えるべき。
「ソ」「ハ」を正しく教えれば、漢字でもこれらの部品が出てきたときに、向きを迷わなくなる。
カタカナの足し算で、上の学年の字も書ける。
※理想はそうですが、、ディスレクシアにとって、カタカナはとても覚えづらいように見えます。たぶん、アルファベットと同じで、ディスレクシア的には単位が小さすぎかつ字面が単純すぎるのだと思います。カタカナというもの存在は早くから教えつつ、完全に書けなくても、左右が反転しても、かまわず漢字に進み、漢字(大)の一部としてカタカナ(小)を教えるうちに、だんだん定着するのではないかと、個人的には推測しています。

2~3年の漢字では、頑張って覚えることと、そうでもないことを区別するべき
2~3年で、漢字の重要な部品の多くが登場する。
例えば「ふるとり」。初出のときに丁寧に教える。そうすれば後が楽になる。

すべての漢字を完璧に正しく、格好もよく、というのは欲張りすぎ。書き順、とめはね、線の長さのバランス、そんなことまで初出で要求されたら、特に書くのが苦手な子供はいやになってしまう。
例えば、「竹」の6画目のハネは、初出の時にはあまりハネていなくてもよしとする。それは第2ステージでのこと。
「食」の3画目のテンが垂直か斜めかは、書体の違いであり、これは間違いとは見なさないと文科省も言っている。学校の先生は教科書体しか許さないけど(※以下参照)
書き順も後回しでいい。でも「口」の書き順は、徹底させたほうがいいけど。
・・・といったふうに、細かいところについては、子供が書く時の特徴を見ながら、どうしても直してほしいところだけを直すようにする。

「文化庁はいま、・・・手書きの漢字が正しいかまちがっているかは、ゆるやかに判断してほしいといいます」
※「書き順は後回しでいい」と先生は背中を押して下さいますが、
道村式カードの長所は、カードに書かれている通りに言えれば
書き順も整うところだと、私は感じてます。
「集」を右下から書くようなことが、なくなります。

親が率先して楽しむこと!!
家で子供と漢字学習をするとき、お母さんが『やりなさい』と言うだけ、あるいは『面倒くさい』という姿勢を示していては、子供は覚えない。お母さんが率先して楽しむこと。
漢字辞典でも引き、『へえ~、家の下はぶたなんだ!』。子供そっちのけで『そうなんだ~』と言うくらいに。
このくらいの年の子はお母さんが大好きなので、寄ってくるはず。
まずお母さんが漢字に興味を持つこと。自分が感動したことだけを子供に聞かせればいい。
※「教える側が率先して楽しむ、時には演技を交えるくらいのつもりで」。これも道村式カードの教え方の重要ポイント。腑に落ちた人が多かったようです。

学校との兼ね合い。2~3年の部品をしっかり覚えること。
学校では4年以降、漢字を1字ずつしっかり教える時間はない。
普通級の先生は、クラスに35人もいたら、気になる子がいても対応できない。
部首名とその意味は、家庭でしっかり教えるべき。親が時間をとってつきあうことが必要。
学校には「しばらく、家でしっかり復習しますので、見逃して下さい」と言う。

漢字は、2~3年生に主な「部品」(漢字にいっぱい使われているが名前がないパーツ)のほとんどが出尽くし、高学年になるとその組み合わせがほとんどになる。
だから、2~3年生の漢字をしっかり覚えることが大事。
高学年で漢字が書けずに苦しんでいる場合は、2~3年生の漢字の復習に戻るのがよい。復習には1年もかからない、数ヵ月で終わることが多いし、2~3年の復習が終われば本来の学年に戻ってよい。
戻るのは、部首・部品の名前を覚えるのが目的。

その際、学校には、宿題の量を加減してもらうよう頼むのが理想だが・・・
現在、学校では「平等」の名の下に、同じ宿題の量が全員に課されている。普通の子なら15分ほどで終わるが、ディスレクシアの子は何時間もかかってしまう。これが平等ですか?と言いたいところだが、親も先生もそこまで踏み込む勇気がないのが現状。
個にあった支援とは、「大丈夫か」と声かけすることではなく、こういうことなのだが。
※ここで、「衣のした」(3画目以降)、「長いの下」の(6画目以降)の
部品の唱え方を練習したのですが、、
一同、道村先生に「おそい!」「声が小さい!」
「もっとリズムよく!」「はっきり!」と叱られました(笑)
九九をやや早口言葉で言うくらいの、かなりのハイペースです。
教える側がテンポよく、楽しげに唱えることがポイント。
「ああ、ここが出来てなかったかも」と思った人は多かったに違いありません。
~ ~ ~

⑥音と訓を1つずつ、セットで覚える
読みが苦手な子は、音読みを苦手とすることが多い。
特に、光村図書の教科書(最大手)では、音読みと訓読みをバラバラに教える。
学校では、何年も先になって登場した音読みをわざわざ教えることはしない。
これが音読みの苦手な子をつくる原因のひとつになっている。

漢字はほぼ必ず音読みがある。しかもカ行とサ行が多い。音読みが中国語に由来していることと関係があるのだろう。
1つの音と訓を覚えることが大事。
そこで、道村式カードでは「漢字のタイトル」と題し、音と訓を1つずつ同時に提示している。
この音読みは、『NTTデータベース・日本語の語彙特性』をもとにしている。1万人が聞いたら6000人以上が分かる、親密度の高い語彙だけを使用。しかも、視覚障害者のために、同音異義語はほぼ全く含まれていない。(※すごい!!)

「確ニンのニン、みと_める」が「漢字のタイトル」
私も教材を自作するのでわかりますが、センスの良い例文って、本当に難しいです。
生徒にわかる表現、明るく前向きな内容、応用が利きやすいこと、
また、ポイントの理解を邪魔しない内容であることが必要ですが
そんなセンスの良い例文を載せた辞書や問題集は少ないです。
「漢字のタイトル」の音読みに選ばれた単語のセンスの良さが、
私は道村式漢字カード最大の長所だと思っています。


2つ以上の音は後回しでいい。
同音異義の漢字を覚えるのは第2ステージ。カードに書いてあるが、ディスレクシアならここは不要。


唱えるとは、自分のことばで言うこと。
カードのおもて面を見ながら、リズムよく唱えることが大事。
例えば「修」を見て、字を目に焼き付けながら、「にんべん・たて・のぶん・さんづくり」と唱える。
3回言わせる。そのときに、頭の中にイメージが浮かんでいるはず。
それから初めて書く。
1つの漢字につき1日1回が、書く限界だと思います。
※経験上、唱えるのは意外と大変なことです。ディスレクシアな子が、言うより書くほうが楽なので書こうとするほどに∑( ̄0 ̄
書こうとするのをあえて止めて、「言えれば書けるんだから」と言い聞かせて、唱えさせることもありました。 それがよかったと思います。
~ ~ ~

自立に必要な最低限のことは、絶対に身につけなければ
発達障害を持つ子の親が「うちの子はあれがダメ、これがダメ」「うちの子にあった方法を探してほしい」と学校に言うのをよく聞く。今は子供が拒絶すれば、その子にあった方法をさまざまな方法のなかから選べる時代でもある。
しかし、これを視覚障害児の置かれた状況と比べた場合・・・視覚障害があったら、泣こうがわめこうが、覚えるべきことは絶対に覚えなければならない。
全盲の子、弱視の子は、普通の子よりもできることはずっと少ない、すべて同じようにできるようにはならない。全盲でかつ発達障害を持つ子もいた。入る言葉は少ない。それでも自立に必要な最低限のことは、絶対に身につけなければならない。
最低限がどこかは、本人を見ている親と教師が決めること。見極めが大事。
「最低限ここだけは」を半年間続ける。続けさせるのは親の責任。先生は1年で担当を離れてしまうもの。生徒の将来は親が責任を持つべき。
最低限を、手を変え品を変え、頑張らせると、いずれ芽が出てくる。

※会場が静まりかえった、渾身のメッセージ。漢字が読めることが日本で生きていくために必要不可欠というのは、本当に切実な事実です。英語とはまったく重さが違います。「自立するために漢字は必要、だからがんばろう」という大きな展望を、教える側が見せる必要があるということです。目の前の漢字テストをクリアするために必要なのではなく。
教える側が、あきらめず、怒らず、「絶対に入れてみせる」という気迫を持って伴走するんだというメッセージを、私は受け取りました。
~ ~ ~

そのほか、質疑応答を走り書きしたメモから・・・

●校長先生にいきなり文句を言うのは×。うるさい親と思われたらおしまい(会場から苦笑が)。先生と親がなんとかうまく手をとりあいながら、同じ目線で進むのが理想。

●中学生以降の漢字学習で、どこまで戻るかは、本人のプライドがある(ので難しい…)。小3までは素直。4年以降、漢字の習得率が低下するのは、全国的な傾向。

●技術の進展により、いずれ書くことが必要のない時代が来る。どれだけのことを妥協するか。一方、これだけはということは頑張ることも大事。

●字が苦手な子も、できれば、できるようになりたいと思っている。そういう子には部首名を教える。その気にさせてあげることが重要。

●社会で自立させることを考えると、指示待ち人間に育てるのは×。「これ(漢字)ができるようになりたい」と思わせることが大切。

☆ ☆ ☆

当日の朝、うちの実験台(道村式漢字カードで5~6年の漢字を習得。
現在は読みにはほとんど支障はないが、漢検5級に落ち続けてます^^;)
に聞いたところ
(道村式漢字カードは)「俺には合ってたよ。」
(どこがよかった?)「よくわかんね。使いやすい、かな。」
(これが合わないと言う人には何と?)「これは"愛のムチ"」
とのことでした。
愛のムチ!!
実は道村先生自身からも、終了後この言葉が出たので、びっくりしました。

次回は録画して、その気迫と語り口を他の方にもお見せしたいと、先生と話しました。
道村先生、ありがとうございました!

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