on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
- 
知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)
- 独創的で、対人能力が高い。空間把握力、全体像や物事の関係性を把握する能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2015-09-27

ディスレクシアにプログレスで英語を教える(2)プログレスの進め方

すっかり秋ですが、皆様いかがお過ごしですか。
私は雨が降ると眠くて眠くて、、これが更年期というやつでしょうか。

前回の記事には、コメントやメールをたくさん頂き、ありがとうございました。
時にきちんと返事せず申し訳ありません(主に眠さのせいです)。

前回のコメントから、私は自分のディスレクシア英語教育研究への意欲を、改めて確認しました(笑)
子に「ほっといてよ」と言われても「英語だけは実験台になってくれ」と懇願しそうな気がします(笑)。

☆  ☆  ☆

遅くなり申し訳ありません。
プログレスのディスレクシア補習用の取り組み方の例を、書いておきます。
どなたかのお役に立てれば幸いです。
前回記事はこちら→

プログレスのBook 1のセット。
正式名称は「Progress in English 21 Revised Book 1」
ここから買えます→

①プログレスの使用目的をはっきりさせる

ここではプログレスを、ディスレクシアな中学生の補習用という、
本来とは異なる目的で使います。
また、ディスレクシアは"目的"を明確にすることで初めて動き出せる人種です。
そこで、「なぜプログレスを使って英語を勉強するのか」
という目的をはっきりさせておく必要があります。

使用目的の部分は、最初からディスレクシア本人に宣言するには及びませんが、
教える側は明確に持っている必要があります。
くどいようですが、「その教材を使って何を教えるのか」
といった目的部分を把握せずに教えている教師は本当に多いので、
この重要性はいくら強調しても、しすぎることはないようです。

(さらに言うと
「この子にはどういう風に英語が出来るようになってもらいたいか」
という将来像も、教える側がちゃんと見えていないといけませんが、
これはまたの機会に、、)

ディスレクシア補習用教材として使う場合の、プログレスの使用目的は
「英語のしくみ(文法)と音(リズムと発音)を、あるところは緻密に、
あるところは直感的にざっくりと、体感(!)で定着させる」
となろうかと思います。


~プログレスは家庭で教えられるか?~
結論から言うと、
教える側が、上で申した目的や将来像を把握していれば
Book 1までは不可能ではない、
が、外注も視野に入れて良い気がします。
中学に入ると、そろそろ親に教わるのを嫌がる年頃ですし、、

理想は毎日30分ですが、
外注するなら週2回、1時間ずつが妥当かなと思います。

その際、教えてくれる人に、上の目標と、
「ディスレクシアは次の単元に進むと、前の単元が定着する」(俯瞰できるから)
ことを踏まえ、だいたいできたらどんどん次に行くようお願いするといいかもです。


②プログレスのどこに取り組むか、取捨選択する

ディスレクシア的補習用にプログレスを使うということは、
・学校の授業で定着しない部分を補う
・ディスレクシアの特性に沿って、できることから苦手なことにアプローチする
ということです。
この点を念頭において、どこを扱うか/扱わないか、取捨選択します。
以下にモデルケースを示してみます。

■1日目(60分):
(0)
「今日はWhatの勉強をするよ」
「これとこれが覚えられたらおしまい」
「20分たったら休もう」などと見通しを示します。
(「できるまで終わらない」は禁句です。
かつてうちも、漢字学習でやりがちでしたが…)

(1)(15分~)
左ページのダイアログ(会話)を、リピーターを聞きながら字を目で追ってもらう。
文法的な分析、単語レベルの解説は最小限に。
リピーターとほぼ同じスピードで、自力で読めたらゴール。

後に書きますが、ディスレクシアにとって、ここはすごく簡単です。
ほとんど説明しなくても、なぜか意味もだいたい分かっています。

<休憩>

(2)(15分~)
左ページ下の例文を、リピーターを聞きながら読み、暗誦。
このときはじめて、文法事項を説明する。
訳も言わせ、SVOの概念や修飾関係が正しくとれていることを確認する。
あまりがちがちに文法用語を使わずに、得意なこと(リズムなど)を使って覚えさせる。
例文を、リピーターの後に続けて、すらすら読めたらゴール。

これも、ディスレクシアにとっては、そんなに難しくありません。

楽しく進んでいるこの段階で、文法の仕組みをさらっと教えます。

<休憩>

(3)(15分~)
右ページ上、チャート(絵)を見て繰り返すなどの問題を1周。
(2)を音やリズムで定着させるのが目的です。

ディスレクシア的には、フレーズをリピートするのも、難しくありません。
この点、非ディスレクシアよりも簡単にこなせているかもしれません。

ここでのディスレクシア特有の間違いは、音韻認識の混乱が起こることです。
(例:spotをstopと言い間違える、など)

「ディスレクシアは音韻認識の障害」とも言われます。
なので、ここが最大のハードルと心得て、
さりげなく、でもその都度、正しい言い方に直します。

発音は、ネイティブと見まごうような美しさは要求しませんが、
あまりに間違っていると正しくスペルできなくなるので、
それができる程度には直します。
(例:beryと言っているのをveryと言わせるとか)

こうした言い間違いは、さらっと直すのが大事なようで、
怒ることはもちろん、笑いのねたにするのも×です。

外注する場合、
(1)~(3)を繰り返して完全に覚えることを、宿題にするとよいと思います。


■2時間目(60分):

(1)(3分)
ダイヤログの復習。自信をつけるのが目的。
「読める」と言うなら、いきなり読んでもらい、
無理そうなら、リピーターの後に続けて読んでもらいます。

 (2)(15分)
ワークブックに取り組みます。
ここからは、ディスレクシア的には難所になります。

ワークブックは、本来は宿題にして自習するのでしょうが
ディスレクシアの場合、ワークブックは教師と一緒に解きます。

基本的には、問題文を教師が読み上げて、
生徒には口頭で答えてもらいます。
書くのはディクテーションと、穴埋めで記入する問題にとどめ、
文を全部書かせる問題は、口頭で確認します。

単語の穴埋め問題。まだstudiesは間違えます。

一度、「疑問文に書き換えなさい」という問題を書かせたら、燃え尽きてしまったので
以来、書き換え問題はもっぱら口頭で行っています。

~単語について~
プログレスをディスレクシア的補習に使う場合、
プログレスの単語の設問は原則として扱わない」のがよさそうです。
単語の暗記は、学校のテストに沿って行うというスタンスです。

プログレスは新出単語が、検定教科書よりもかなり多いようです。
ワークブックには単語の意味を確認する問題がたくさんついています。
これらは、よほど時間が余ったときや、自信になりそうな時以外は、
基本的には扱いません。


少し話がずれますが、
ディスレクシアの場合、ダイヤログを覚えるのはわけないことです。
特に、ダイヤログや例文の内容に納得感があれば、簡単に覚えられます。

#(納得感とは…
「ちょwwこの2人、Shall we meet after school?だって、リア充じゃんww」)
「ジョンがマイクに声をかけたのは、テニスの技を自慢したかったんでしょ」
と、ダイヤログの状況を具体的にイメージし、
登場人物の人間関係を批評さえすることです∑( ̄0 ̄
非ディスレクシアはそういうことはあまりしないと思いますが、
ディスレクシアな子は、驚くくらい、まずここから入ります)

単語は、ダイヤログから部分的に切り出すという形で思い出すようです。
子を見ていると、ことばの意味の単位が「語」ではなく
「フレーズ」「文」下手したら「ダイヤログ全体」なのかもと思わされます。
「語」は、意味の単位としては、彼には細かすぎる(?!)ようです。

それでも、ダイヤログや例文を納得感をもって覚えていれば、
今のところは、その課の新出単語の確認テストなら、それほど苦労しません。

問題は、文章の中で、少し前に出会った単語が再び出てきたときです。
そんなときは、単語の意味を思い出すのに、大変苦労しています。
これまで会ったディスレクシアな生徒たちと、同じ経過をたどりつつあります。

だからといって、単語だけ取り出して暗記させるのは、
ディスレクシア的には、よほどの目的意識がない限りは無理です。
テストが明日に迫っているとか、どうしても合格したい試験であるとか…

この点では、今後もますます苦労しそうです。


■7時間目(60分)

いきなり7時間目に話が飛びます。
プログレスは、1つのLessonが3つのScene(シーン)に分かれており、
最後に読み物がついています。
1つのSceneを各2時間かけて取り組んでいき、7時間目に読み物に取り組みます。

この読み物は、
文法項目はすべて、単語もほとんどが、Lessonの内容に限定されており、
とてもスモールステップに出来ています。

ディスレクシアでも、やがては初見の文を自力で読めるようになりたいので
これにチャレンジするわけですが、
言うまでもなく、この7時間目がディスレクシア的には最大の難所です。

どうやら、実力うんぬんよりも、
その日の体調や疲労度によって、読む力が大きく変動するように思います。
先日、部活を終えて雨のラッシュのなか帰宅後、下の読み物を読ませたら
1行読んで胸をかきむしって苦しみだしたので、中止しました(- -;) 
読み物は、体力気力が充実しているとき限定のようです。

読み物にも、リピーターを使います。
使い方:
・リピーターに続けて、文を言ってみる
・1文を自力で読んでから、リピーターを聞いて正しく読めているか確認する
・自分の音声を録音する(→急にノリノリになって盛り上がります(笑))

この文で一番苦労したのは、Spotをstopと言わないようにすること、
backyardを「バックドア」「バックコート」と言わないようにすることでした…

~和訳について~
ディスレクシアの子は、状況を把握した上で読んでいるので、
訳は本当に自然でうまいです。

例えば、Spot lives in the backyard and sleeps in the doghouseを
「ストップが普段いるのは裏庭で、寝るのは犬小屋です」
と訳すのがディスレクシアです。

これを「liveは「住む」と訳しなさい」「inもちゃんと訳しなさい」
とは、言わないほうがいい気がします。
ただし、in the doghouseがsleepにかかっていることを分かっているかどうかだけ、さりげなく確認すべきだと思います。


~~~~

そうこうしているうちに、トレジャーが手に入りました。
次は、検定教科書・プログレス・トレジャーを比較してみます。
結論だけ先に書いておくと、
トレジャーはディスレクシアにはとても大変です…



2015-09-02

プログレスでディスレクシアに英語を教える(1)プログレスのディスレクシア的長所

なかなか書けず申し訳ありません。やっと夏休みが終わりました。

ディスレクシアな中1男子の夏休みは、
8月31日夜9時に数学のレポートに気付くというエンディング(苦笑)
さすがの私もキレて、通信簿の保護者通信欄に
「2学期の中間試験までに提出物の不提出があったら、
期末まではバスケ部を休部させます」
と書いたところ、子は風呂で号泣。その後したり顔で出てきて・・・
「俺からバスケを取ったら引きこもりになるよ?バスケする以外は」
「どうやって先生をだまして提出物を出したように見せかけよう」
「部活はダメでも朝練はいいよね。じゃあ7時、いや6時半に学校に行くから」
と、裏をかくようなことばかり考えていますorz

規則で縛ると"抜け道"を全力で考えようとするディスレクシアの子に、
勉強とバスケを交換条件にするのは、何の意味もなかったようです。はぁ。

とはいえ、バスケが彼に良い影響を与えていることは明らかです。
まっすぐ上にジャンプする練習を、毎日何時間もするうちに、
ずいぶん体幹が整ったのも、そのひとつです。

☆  ☆  ☆

さて。プログレスのことを書いていきます。

夏休みに入ってから、プログレスという教科書を使って英語を教えています。

結論から先に申しますと、
プログレスは、ディスレクシアにかなり適した作りの教科書です!!

今回は、プログレスとはどんな教科書か、
そして、プログレスのディスレクシア的長所を紹介します。

~ ~ ~

プログレスことプログレス・イン・イングリッシュ(Progress In English)は、
イエズス会が作っている、中高向けの英語教科書です。
キリスト教系の中高一貫校で多く採用されています。検定外です。

初版は1964年。
ロバート・フリン神父という、神戸と福岡のカトリック男子校で教鞭をとっておられた方が書かれたそうです。
そのあたりのエピソードはこちら→。現代のザビエルです。

私の卒業したミッション系では6年間、英語の教材はほぼこれだけでした。
昔は、いかにも教会関係者が書いた感じの、手作り感満載の教科書でした。

現在の版の正式名称は、Progress In English 21 Revisedで、
(今まで取り組んだ感じでは)宗教色は特にありません。


Book 1の奥付。Book 5まであります。

購入方法は、版元からの直接取り寄せのみです。→
アマゾンでも一般書店でも取り扱っていません。
そのことが、謎めいた雰囲気を高めています。

でも、使ってみると、閉鎖的な雰囲気はまったくありません。

~ ~ ~

プログレスの一番の特徴は、とにかく音から入ることです。
単に「音声が付属している」ではなく、「まず英語の音から入る」なのです。

左から:テキスト、ワーク(いわゆる文法問題)、
自習用ワーク(ディクテーションや単語テストなど)
中央にあるのが専用再生機「SDリピーター」

ディスレクシアには、教科書の読み上げだけでも、大変ありがたいことです。

#子が通う中学は自作教材を使っており、音源が全くありません。
#音声教材のない英語学習はディスレクシアにとって、
#船で山を登るようなものだと知りました。
#とにかく進まない。そして定着しません。

しかし、プログレスにおける音声の位置づけは、
ただ単に、教科書を読み上げることではありません。


「聴く」→「話す」→「読む」→「書く」の順序で作られています、
と1ページ目で宣言

「聴く→話す→読む→書く」
ディスレクシア英語学習は、この手順が唯一の道だと私は思っていますが、
プログレスは、この順番で学習が進むように作られた教科書なのです!
すべての新出事項を「聴く→話す→読む→書く」の順番で学習します。
(少なくともBook 1では)。
なんとありがたい!!

中はこんな感じ。
基本的には、見開き1ページに1つのレッスン。
3レッスンごとに、まとめがあります。





左側の番号をSDリーダーに入力して、頭出しします

読み上げてくれる機械はこちら「SDリピーター」。
90年代にソニーからリピーターが出ていましたが、
その開発者が、退職してこれを作ったそうです。
頭出しがサクサクできるのと、自分の声を録音できる(30秒)のがポイント


1) 「聴く→話す→読む→書く」という順番で編集されている

これなら、書かなくても、学習事項を覚えることができます。
プログレスを使う最大のメリットは、この点でしょう。


プログレスには他にも、ディスレクシアに適したポイントがあります:

2) スモールステップである
普通の教科書よりも、はるかにスモールステップです。
その課で学ぶべきことがものすごく明確なので、
ディスレクシア的には、苦手な暗記に集中できるのがありがたいです。

また、けっこう多くの教科書では、未習ポイントをこそっと混ぜ込んできますが
ディスレクシアだとそこで確実につまづくので、とても困ります。

プログレスの書かせる設問は、すでに耳から入っている単語だけで構成されています。
これなら、ディスレクシアでも比較的つまづかずに書けます。

目次。
例えば6.では、1 命令文だけ、2 Let'sだけ、3 Shall weだけで、
レッスンが作られています。


3) 各単元の教え方が、「大→小」になっている
各レッスンは、
(1)新出事項を含む会話文を、すらすら言えるようにする
(2)会話文に含まれる文法事項を学ぶ
 →(3)単語を覚える
という順番に組まれています。
「文法事項を学んでから、会話で応用しましょう」ではありません。
ディスレクシア的には、大変ありがたい順番です。

4) ゲーム感覚。いたずら心に満ちている
「Where is the clock?」という音声を聞き、絵の中から時計を探す問題で、
実はどこを探してもclockが描かれていないなど・・・
(正解は「I don't know」)∑( ̄0 ̄

中学生男子のいたずら心をくすぐる仕掛けがちょこちょこあります。
ディスレクシア中1男子は、これにめちゃくちゃ食いついてます。
「全部 I don't knowでいいじゃん!!」と(笑)

会話文の音声は容赦ないナチュラルスピード、
しかも声変わり前の男子が出演。
「同じスピードで言ってやろう」と、闘争心がかき立てられるようです。

5) 反復が非常に多い
プログレスの隠れた特徴のひとつ。
忘れた頃に「昔の話題を蒸し返すようですが…」と復習問題が登場します。
(登場人物も以前と同じなので、遊び心があります。)
「しつこいw」と笑いながら、学習事項が定着します。

あるいは、同じフレーズが、
穴埋め・ディクテーション・名詞だけ変えて・疑問文に・否定文に…
と、いろんなかたちに変形して問われます。

ディスレクシア英語学習は、普通の子の何倍も反復が必要です。
その点で、反復が多いのは、非常にありがたい作りです。

ワークブック。
先に暗記している(=音で入っている)と、まあ書けます。
この順番が大事だとつくづく感じます

6)教材に愛情が感じられる
これは実際にその教材を使っている最中に感じられることで
具体的な例を示すのが難しいのですが・・・
でも、設問の配列ひとつとっても、教材から愛が感じられます。
ここを外さなかったフリン先生はすばらしいです。

当ブログが推奨する教材(道村式漢字カード、ジョリー)に共通することですが
ディスレクシアは、こういうことにひときわ敏感だと私は感じます。

#ちまたには愛のない教材が多すぎます。具体的な名は控えますが。
#もしかしたら、ディスレクシアの"学習障害"の原因のひとつは、
#愛のない教材への拒絶反応なのかもしれないと思うほどです。

~ ~ ~

次回は、家庭学習でのプログレスの取り入れ方について、書くつもりです。