ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2015-12-08

第3回単語テスト/英検はディスレクシアの子に自信をつけさせるのに有効である

抜き打ち単語テストの結果。


pとqが逆
本人は「わかってても、書くのは無理」と思っています。

たしかに、口頭で問う形式なら、もっと取れたでしょう。

しかし、そもそも単語テストという形式がディスレクシアには厳しいようです。
ディスレクシアにとって、日→英の単語テストには何重もの困難があるようです。

1. "単語"は、ディスレクシア的には意味単位として細かすぎる

前にコメントで高校生の方から指摘があった通りです→

単語は、単体というより
動詞+目的語(ask a question)、
形容詞+名詞(a quiet room)、
動詞+前置詞句(walk in the park)
などのような、少し大きなかたまりで覚えているようで、
単語1つ(askだけ、inだけ)を問うて、その意味を想起させるのは
難しいことのようです。
「そう、あれ・・・あれだよ・・・」的な状況が続きます。

教えると「そうそう!それ。分かってたんだよ」と言うので、
見ようによってはお調子者と言うか、
「なら自分で正解を言いなよ」と言いたくなります。
きっと学校ではそう見えているに違いありません。危険だ(- -;)


単語を「V+O」や「形+名」のかたまりで覚える単語帳としては、
「英単語ピーナツ」シリーズという大定番がすでにあります。
中学生で使えるかは未知数ですが・・・



2. 具体物より、抽象概念を表す語のほうが覚えづらい。

イメージしづらい語は覚えづらいということのようです。
alwaysやsometimesはなかなか覚えづらく、
arrive at the airportやwait for the busは覚えやすいようです。
きっと「空港到着」「バス待ち」の絵が頭の中に浮かんでいるのでしょう。
(こうして書いてみても、日本語なら1語で言えることが、
英語では単語が細かく分かれています)


3. 英単語を音読すること(デコーディング)の困難について。

私は、英語は音にできないと解読不能だと思っています。
仮に間違った発音でも、ある語を見たら常に同じ音を頭の中で鳴らせないと
英語は読めません。
この「字を見て音を想起する」ことを、専門用語でデコーディングと言います。
de-codingとは「暗号を解読する」という意味です。

#というか、
#各種研究では「読む=頭の中で音を鳴らす」ことだと当然視されていますが
#漢字は必ずしもそうでもありません。
#漢字は「頭の中で音にしなくても意味が分かる境地」があり得るのです。
#だからこそ「英語は音にしないと意味がわからない。この点が日本語と違う」
#ことを改めて確認する必要があるようです。
#そして、ディスレクシアで上の境地を極めることで漢字を読んでいると、
#中1ショックが激しく出てしまうようです。

話を戻すと、ディスレクシア的には、英語というのは
文字を見て頭の中で音を鳴らすことから逃げられない点で(も)
日本語よりはるかにやっかいな言語です。

ただし。
ディスレクシアは、ある単語を見て、苦労して音にできた瞬間に、
「ああ、あれね」という感じで、同時にすとんと意味も分かります。

ディスレクシアの子が英語を読むときは、
とつとつだとしても、驚くほど正しい発音で単語を読みます。
非ディスレクシアはかわいそうなほど、ことごとく間違った発音で単語を覚えているケースもあるのとは対照的です。

ディスレクシアにとっては、正しく読める語だけが意味と結びつくと言えます。

なので、ディスレクシア英語教育では、
音読が英語力強化トレーニングとして、非常に大事になってくると思います。

誰かに横についてもらい、
正しく読めているか確認してもらいながら読むのが良いと思います。



4. 英単語を書くこと(エンコーディング)の最強な困難について。

さて、そうして正しく英文や英語が読めるようになっても、
それを英語の文字に書き起こすのは、
ディスレクシアには、本当に、ほんっと~~に、大変なことです。
(音を文字にすることを、encoding(暗号化)と言います)

上の単語テストには、エンコーディングの苦労の跡が多々あると言えます;;




子が漢字に苦労していた時代は、
「漢字ってディスレクシアにとってなんたる負担(怒)」
と私も思っていました。

でも、漢字は一つひとつの字にもパーツにも、意味があるという点で、
ディスレクシア的には、英語よりはましな文字とさえ言えます。

英語は、26の文字それ自体に意味はなく、音としても頼りなく
(日本語の「っ」「ゃ」みたいなものです)、
また、読み方に例外が多々存在します
(英単語の30%は規則から外れていると言われます。
中1単語に至っては70%が規則から外れているでしょう)。
音と文字の結びつけが困難なディスレクシアという人種にとって、
とりわけ難度の高い言語です。

ならば、せめて、そんな鬼畜な言語を文字先行で学ばせることだけは、
ディスレクシアの子には避けないといけません。
やはり、ディスレクシア英語学習は聞く→言う→読む→書く
の順であるべきでしょう。

☆  ☆  ☆

しかし、これだけ英語に苦労しているにもかかわらず、
子は、自分は英語では落ちこぼれていない、
学校のやり方と今は合わないだけと思っています( ̄0 ̄。
どうやら英検5級に合格したことが、自信となっているようです。

英検はディスレクシアの子に自信をつけさせるのに有効だということは、
中一ショックを一足先に克服された方から教えていただきました
(さるお方さま、この場を借りて御礼申し上げます)
広汎性発達障害の診断を受けているそのお子さんは、中一ショックを受けて
さっそくジョリーをアプリで試したところ、とても性に合い、
1学期の期末でV字回復を成し遂げたとのこと。
特に「トリッキーワード」(不規則な綴り)という表現がぴたっとはまったそうです。
(ちなみにこの方、ジョリー歴はアプリだけだそうです)

その後、中1の秋に英検5級、続いて4級に合格し、
今では「自分は英語はできる」と自信を持って取り組んでいるとのことでした。

英検は、リスニングの比重が大きく、かつ選択式で記述がないので、
ディスレクシアでも合格しやすい。
英検に合格すれば、学校の先生も一目置くし、本人にも非常に自信になる。
だから、ディスレクシアが英検を利用しない手はない・・・
と教えて頂きました。

いい話だ~(´Д`)と思う反面、
「アルファベットが書けるようになるのに1年以上かかったうちのやつが
英検を自信材料に使うなんて無理でしょう・・・」
と、この話を伺った時は思いました。

しかし、リスニングが満点なら、筆記は5割以下でも合格できるのが英検です。
はたして、さるお方の予言は的中し、子はリスニングはほぼ満点で合格。
そのことは学校の先生の子への態度を変えたようで
「最近、先生が授業中にやたらこっちを見てくるんだよ」と言っています。
そして、そのことが大いに励みとなっているようです。

そんなこんなの期末1週間前、格闘は続きます・・・

8 件のコメント:

  1. もじこさん、お久しぶりです。LD学会でお会いしたmoonです。息子も英単語は音声CD付きの教材で覚えていました。全単語の音声が無いために、音声有りの部分と無しの部分では覚えるのにずいぶん違いがあると昔話していたのを思い出します。昨年の受験時、突然英文がスラスラ読めるようになったと言い出したことがあります。どうやら単語がほぼ完璧に覚えられたことで、文中の語彙がしっかり見分けられるようになったことで、文を読むことが急速に楽に、日本文を読むのと同じような状態になったのだと思います。今は、大学でTOIFLに向け勉強続行中ですが、英語自体に自信はあるようです。

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  2. もじこさん、前記事のコメントを含め具体的に教えていただきありがとうございます!とても助かりました~~!!

    コメントいただいた英語の勉強方法を、息子に伝えてみます。
    選択問題とリスニングなら出来るという感覚があるようなので、英検も進めてみようかな・・(テストなるものは無条件拒否!なんで英検も関心なしで・・)

    >1. "単語"は、ディスレクシア的には意味単位として細かすぎる

    少し大きな単語のかたまりでの方が覚えやすいので、そこから1単語引いて・・というややこしい単語の覚え方を息子はしてるのかなと、納得。

    >2. 具体物より、抽象概念を表す語のほうが覚えづらい。

    たしかに、頭の中で絵が浮かぶものは覚えやすいみたいです。
    日本語もいまだに抽象的表現は苦手ですから・・

    >3. 英単語を音読すること(デコーディング)の困難について。
    >4. 英単語を書くこと(エンコーディング)の最強な困難について。

    まさにその通り・・・
    この記事をコピーして学校に見せたいくらいです・・

    >ならば、せめて、そんな鬼畜な言語を文字先行で学ばせることだけは、ディスレクシアの子には避けないといけません。
    やはり、ディスレクシア英語学習は聞く→言う→読む→書く の順であるべきでしょう

    そう、ここを先生方に理解だけでもしてほしい!!知識として持っていてほしい!!と思っていたけれど、どう伝えたらいいのか悩んでいました。
    もじこさんの記事から言葉を拾って、相談してみたいです!

    息子さんがカタカナで回答している画像、息子も1学期の定期テストでそんな風に書いていたなぁ~笑。
    通用しないとわかり、今は空白になっていますが。
    カタカナでも書いちゃうその度胸・感覚・発想が私は「すごいな」と思うのですが。
    私や娘たちなら、最初からあきらめて書かないから・・

    息子は3年生の時に引き算が大嫌いで、引き算テストで引き算の-すべてに縦棒を自分で書き込み、+にして足し算し提出したことがありました。
    答案用紙は「0点」でしたが、先生が「足し算みんなあってたよ!すごいね!」とほめてくれたと嬉しそうに持って帰ってきました。
    その先生は職員室でも笑い話で広めてくれて、会う先生ごとに「息子君、発想がユニークですね!」って声かけられました。笑
    その先生の時は、宿題も母が提案した1~2学年下がった内容を認めてくれて、3学期には2年生で大きくおくれをとった算数も漢字も同級生に7~8割ほど追いつけました・・
    4年生からは、みんなと同じものやらせます!おかあさんは手を出さないで!という先生で、苦肉の策からのユニークな回答も「ふざけるな!」と一掃されて・・息子は二次障害へとひた走りに走って行ったっけ・・苦笑。
    3年生の時は、若い臨時教諭でしたが勉強熱心で個々をしっかり見てくれていたので、、彼女がずっと担任だったら小学校時代も違っていたかな・・なんて思いだしました。
    長年やってきましたから!的な自信満々の50代女性教諭は、もうこりごりです(4年、5年と大事な時期がそんな先生方・・泣)

    もじこさんが息子のクラスの英語の先生だったらなぁ~~なんて思っちゃいます。笑




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  3. Moonlightさん、ようこそお越し下さいました。
    ブログを続ける自信が薄れていたのですが、また書く気持ちを頂きました。ありがとうございます。
    音声はやっぱり大切ですよね。

    ちゅら海さん、何かしらお役に立てているなら嬉しいです。
    私もここではいろいろ偉そうに?書いていますが、子供の学校には(まだ)何一つ働きかけられないヘタレですから・・・
    それにしても、実に発想力豊かなお子さんですね!
    二次障害さえ出なければ、ちゅら海島生活ではむしろ「よく働いて気が利く、ありがたい存在」に違いない、、というのは都民の妄想でしょうか。

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    1. こんばんは。もじこさんの奮闘っぷりがあったから、いま私が自分に自信を持て始めているんですよねー。もじこさんには、感謝しっぱなしです。私がここを見つける数年前から書き記していますもんね…。時間って財産だな〜と思える未来になると思えれば…って感じで、大変な現実であっても私も焦らず頑張れたりします。しっかり休んで、また進めばいいんですよ〜きっと。
      私自身、同じような人が存在しているって知れた安心感がとんでもなく効果があったみたいで…いま実は家族との会話がすごく楽しくなってきているんですよ〜。「話がわからん」と中断されることもなく、ふわふわした話し方の自分の様子をみても、急かさずに待ってくれてる気がしてて…家の空気がやわらかくなってます^^

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  4. もじこさんのブログは更新されるたびしっかりチェックさせていただいています。息子も実情はディスレクシア。前回のチェエクリストでも「そうそう」ということが多く、特にプラモデルを何も見ないで組み立てられるのには幼少時から驚かされたのですが、前回のチェックリストを見て、他にもそういう人がおられるのだと知りました。先日のやり取りのあと、何度かコメントを投稿しようとしたのですがPCに不慣れなため失敗し、ようやく投稿に成功した次第です。もじこさんのこのブログは私にとってもとても役に立つことばかりですが、そういうもじこさんに励まされて、私も自分にできることをやってくエネルギーをいただいています。今後ともよろしくお願いいたします。

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  5. もじこさん、ご無沙汰してます!
    改めまして、息子さん、英検合格おめでとうございます!!
    先生の態度が変わったというのが、いいですね。
    もじこさんは、まだ学校に働きかけしていないということですが、一緒に、頑張っていきましょうよ!!

    息子もトリッキーという概念が大好きです!
    曖昧なことが苦手なので、まずは大きくルール化(42音の基本の音のルールの定着)した後に、イレギュラーはトリッキーだよという説明が分かりやすく、受け入れるのにストレスが無いようですね。


    英検が来年から変わるってご存知ですか?
    4技能を問うようになるようです。
    ひとまず、5級、4級は、スピーキングが追加されます。
    2級にライティングが導入されます。
    ディスレクシアにとって、それがどう影響されますでしょうかね。ライディングは不利になるような気がします。
    http://www.eiken.or.jp/eiken/info/2015/pdf/20151111_pressrelease_eiken.pdf

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  6. 皆様、ありがとうございます。お励まし、ありがたくも痛み入ります。

    はるぴょんさん、トリッキーという概念が好きな子は、どうやらアスペ系に多いようですね(まだサンプル数が少ないんですが)。うちは「トリッキー」という概念を知ったらすべてがトリッキーに見えてしまっているようです(- -;)もう少し進めば規則的な語も増えてきて、読みやすくなるのでしょうが。

    英検2級にライティングですか。TOEICやらGTECやらと差別化をはかりたいんでしょうね。あまり標準化したテストばかりで中高生を縛るのはかわいそうだな~なんて思います。英検も、本人の自信になる範囲で有用であり、英検に受かりさえすれば英語がバッチリというわけでもないし、英検に受からなければ英語がダメダメというわけでも全然ないので。そのへんを親も本人も履き違えないようにしたいですよね。

    英語の先生の態度はあからさまに変わったようですよ(苦笑)。子はそういうことには敏感なのでいろいろ教えてくれます。「授業中やたら先生と目が合うから『なんすか』って聞いてみたら『N君最近がんばってるじゃん』って言われた(俺は変わらないっつ~の)」とか。また、「この学年にはなぜかリスニングだけ得意な子が何人かいるから」という理由で、英語の定期試験に10点分ですがリスニング(英検5級の問題)が含まれるようになりました。そろそろ学校も、不思議な出来なさをする子がいることに気付いているのかもしれません。

    PTAではせっせと奉仕して、学年主任の信頼を取り付けるところまでは来ましたよ(笑)。
    先日は、私学の先生方と父母の集まりの分科会にまで引っ張り出されました。そこで学年主任が「特に若い教員は、親からの激しい言葉に傷つき、親からの提案を聞くことに二の足を踏む傾向にある。でも親側(一人の親ではなくPTAなどの集団)と教員側の話し合いはエゴのかたまりにはならないので、若手教員も心を開いてほしいと私は伝えたい」と話していました。そっか~。これは"心を開いてあげましょう"宣言が出たようなもの、なんとかうまく切り出せないかなと考えています。あと、私学は全般的に発達障害対応は、個性として受け入れる以上のことは基本的にはしておらず、特別支援教育という観点は公立と違って存在しないらしい、よってディスレクシア対応だなんて望めない(少なくとも東京都では)ことも、そこで分かりました。個々の先生レベルではいるのかもしれませんが、、、、

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  7. 息子さんの(俺は変わらないっつーの)っていう心情がすごくよくわかります…。なんでかある時から周囲の人間が抱く私への印象が突然、がらっと変わったりする…というのも昔から私にはたくさん経験があって、しかも私の場合はなぜか「過大評価」から入ることが多くて…。対人恐怖やら人に対しては基本、かなり疑り深いとか「自分を過小評価している」と言われることも多くて…自分の中での能力間の差でもそうですが、外部の印象の温度差(第一印象でのバカ・賢い、あなたはできる・こんなこともできないの?というのと、時間がたつことで反応も逆転したりもする)
    両方の間で揺れつづけ自分自身に悩むことも多く、態度も結構おどおどしてしまいます。人ではなく、自分を信じないとこの迷路は抜け出せませんでした。(誤診の経緯はここにあると自分でも思います)

    それも時間が経てば回り回って(一周して)最初に抱いたような印象に戻るような動きも多いみたいで…なので自分が対人関係の対処において「常に焦らない」ことを強く意識してます。
    自分の隠れたような部分(苦手さ不得意さ)が相手に伝わり始めると、失敗も込みの自分を認識してもらうことで一番最初より少し、理解が進んでもらえ、より良好な関係に戻ることも多い。自分が焦りから縁を断つことだけは、少なくしようという自分なりの自戒を自主的にしています。

    自分は周囲からはちょっと異端なのでしょうけど、トリッキーな存在とは思いたくないし思ってもいないので、やはりディスレクシアを理解するにはもっと時間がかかりそうです。ディスレクシアもっと増えればいいのにと私は思います。
    そしてディスレクシアのことだけじゃなく「非ディスレクシアのことも知らないと自己理解が進まなかった」あたりが、自分の思考回路にとても納得がいく要素だったんだな、と自分でも思っています。珍しがられるような反応ほど私は欲しくないし正直、カミングアウトの必要がないくらい、ありふれた存在になるまでの辛抱という気持ちでブログを書いたりしてます。私にはただの趣味扱い。
    極めて真剣味がないので、情報が欲しい人にはちょっとアレですけどね…。

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