on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
- 
知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)
- 独創的で、対人能力が高い。空間把握力、全体像や物事の関係性を把握する能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2013-07-29

視写を始めて2ヵ月/「こんな簡単な問題も分からないの?」

夏休みはディスレクシアの子にとってはsummer slide(「夏のすべり台」、それまでコツコツ積み上げてきた成果を忘れ去ってしまう時期(泣))らしいので、1日1時間と決めて算数・視写・書き取り・音読の勉強を続けています。




視写は6月から週1回10分続けています。
7月上旬には、間違いはあっても300字書けるようになりました。





遊びに行ったり合宿があったりで少し間があくと、あっという間に書けなくなりました。。
最後は同じ行を繰り返して書いてます。


視写は一応習慣化したのですが、いま最大の課題は別のところにあります。

子は終業式の日、しくしく泣きながら、社会の教科書を目の前に放り出して
「ここに書いてあることが全然わかんない。
読むのをあてられると「読み方が変」ってみんなに笑われるし。
読んでも全然意味がわかんない。ちんぷんかんぷん。」
と告白しました。
本当は社会的事象に関心のある子なだけに、社会の教科書が分からないのは本人にとって屈辱のようです。



試しに社会の教科書を1ページ読ませると、声には出せますが、内容がまったく頭に入っていないようです。


「サピに行ってる子に
『こんな簡単な問題も分からないの?』
ってバカにされて、笑ってごまかしてるけど、
本当は分からないのがくやしい(泣)。
ぼくはこのまま、ずっとバカなの・・・?」とも言います。

家では、自分がディスレクシアであることに納得して、こつこつ読み書きの勉強を続けています。
学校の担任も、完璧ではないものの、少なくとも子を精神的に追い詰めてはいないようです。
でも、ここへきて「クラスメートの言葉」という新たな難問が出てきました。



子の小学校は中学受験熱が高く、クラスの半分以上が受験します。
そんななか、本人の意志により友達にはディスレクシアだと一切言っていない子は、クラスメートにバカにされることも増えてきたようです。

子の名誉のために言うと、勉強以外の場では子は社交的でリーダータイプ、むしろ人気者です。
社交性と勉強のできなさのギャップが激しいことも、周囲の子から厳しい言葉が飛んでくる原因になるようです。
「『もっとがんばりなよ』『もっと字をきれいに書きなよ』とも言われる。でもこれは励ましだから」とも言っていました。
そのセリフは、ディスレクシアの子には最大の禁句のはず。
心の中では、どんなにか悔しい思いをしていることでしょう。



「こんな簡単な問題も分からないの?」は、中学受験組のクラスメートが家で親に言われているセリフに違いありません。
親に言われた言葉がストレスになり、それをそのまま自分よりできない人にぶつけているのでしょう。

実は私も中学受験経験者なので、中学受験がいかにストレスフルな経験かはよくわかります。
でも、だからこそ言いたい。
人を見下して「自分はできる側の人間」と選民意識にひたるための勉強なら、なんの意味もないと。



子は友達の言葉に相当へこんでいますが、字を忘れないための勉強を黙々と続けています。

2013-07-25

赤ちゃんの頃、すでにディスレクシアの兆候はあったのかも

子の保育園時代の先生に、道でばったり会いました。

子は生後8週、まだ首もすわらないころから、年少になる前まで、
当時は無認可だったこの保育園にお世話になりました。
子と母をまるごと全肯定してくれた、夢のような場所でした(T T)
この先生は、子を通して出会えた数少ない「ほんものの先生」のひとりです。

「この間一人で電車に乗っているの見たよ、すっかり大きくなって」と言うので
「実は彼は字が苦手なんです・・・最近は学校の授業ではいいとこなしで。
ここに通っていた赤ちゃんのころは、まさか字が苦手とは思いもしなかったですけど・・・」と言うと、先生は
「あ~・・・でも分かる。」
と、当時のことを話してくれました。


☆  ☆  ☆


今だから言うけど、「この子は違う」って保育士の間で言っていたんだよ。
当時いた保育士が、いまだに覚えてて話題にするくらい。

人見知りがすごく激しかった。私にはなついていたけど、ちょっとでも相性が悪い保育士には絶対触らせなかったり。
絵にしても音楽にしても、食べ物にしても、他の子とは違う独特の感性を持っていた。
(そんな。1~2歳でもそこまで分かりましたか?)もちろん。

(こだわりが強い?)それともちょっと違うけど。

暴れたりとか、やんちゃとか、そういうのではなかった。
それでも印象に残っている。
つまり、それだけ周りの子と違うということ。
私は「さすがお母さんの子だね」と思ってた。
(苦笑。字が苦手なのは私の家系なんですよね。私の父と、よくよく考えると祖母がそうなんです)



(話し始めはほかの子より遅かったでしょうか?)
そんなことはなかった。無口だったけどね。何事にも慎重だったし。
でも、よく話を聞いてあげれば、「こうしたい」というのをちゃんと言える子だった。
そのときに言うことに、ほかの子と違う独特のものがあって。


トム・クルーズと同じやつでしょう?
字が苦手な分、何かものすごく得意なものを絶対持っているはずだから、それを伸ばしてあげたほうがいい。
空手は続けてるの?
(実は・・・昇段試験で道場訓を言わないといけなかったんですけど、それがどうしても覚えられなくて。よくよく聞いてみると「読めない」って言われて。それでやめました。今はサッカーに燃えてます)


私は両親が小学校の教員だったから分かるけど、今の時代は、学校の先生にも本当にいろんな人がいる。
親にもいろんな人がいるのと同じように、教員にもいろんな人がいるってこと。
だから、教員が正しいことを言うとは全然限らない。
教員の言うことをうのみにしちゃだめ。
Sちゃんの言い分もよく聞いてあげてほしい。

~~~~

一人っ子ですし、育児は保育園にお任せな感じでもあり、
また発育が特に良いわけでも悪いわけでもなかったので、
当時は自分の子がほかの子と違うだなんて、思ったこともありませんでした。

我の非常に強い子でした。
ベビーカーが大嫌いで、ほとんど乗ったことがありません。
10kgまでだっこひも、20kg近くになってもだっこで移動してました。
チャイルドシートも大・大・大嫌い。乗せたら最後、解放するまで号泣しつづけてました。

保育園時代は電車が大好きでした。
プラレールをリビングいっぱいに組み、崩すと超怒るので2週間くらいそのままだったり。
乗るのも好きで、運転席の後ろに陣取って一心不乱に眺めていたり。
金曜のお迎えのあとは電車の日と決まっていて、踏切で電車に1時間以上も手を振り続けたり、一度など夜9時近くまでいろんな電車を乗り継ぎ続けたこともあります。
電車に狂喜乱舞する様子を見て、何回か知らないおばちゃんに「いいわね~、本当に楽しそうね~」と言われたこともあります。
(あの頃は、「永遠にこれが続くのか・・・2人目なんか絶対無理」と母ちゃんはくたくたでしたが(苦笑))

寝る前の読み聞かせも大好きでした。何冊もせがまれてこっちが先に寝てしまうこともしばしば。
ただ・・・それでも、自分で読もうとは決してしませんでした。

あと、保育園のお友達の電車好きはたいてい、駅名をそらんじるのですが、
子は駅名にまったく興味がないことを、ちょっと不思議に思いました。




2013-07-22

女子のディスレクシアは男子とは異なる

「女の子のディスレクシアは分かりにくい」とさる方から言われて以来、ずっと考えてきました。

思えば予備校の生徒や学生時代の知り合いにも何人か、「あれって実はディスレクシアだったのかも」と思う女の子がいました。

私がディスレクシアだと思う女子高校生・大学生は、ディスレクシアの男子高校生・大学生のような乱雑な字は書きません。

ものすごく丁寧な、でも異常なほど勢いのない字を書きます。

それだけでも、女の子のディスレクシアは男の子のディスレクシアとは出方が異なるんだろうなと推測できます。

女の子には「整理整頓をきちんとしていないと」「真面目にこつこつやらないと」「ノートというものはきれいに書かないと」というプレッシャーが大きいので、男の子とは別の問題がありそうな気がします。

そんな「女の子のディスレクシア」の記事を2本、訳してみました。
ねむねむさんに捧ぐ。


ディスレクシアの脳解剖は男女で異なる

201358日、Science Daily 原文はこちら

  • 成人の男性と女性、また男の子と女の子では、ディスレクシアと非ディスレクシアの脳が少し違う
  • 男性ディスレクシアは、言語処理を行う脳の灰白質が少ない
  • 女性ディスレクシアは、感覚処理と運動処理を行う脳の灰白質が少ない


ジョージタウン大学メディカルセンター所属の神経科学者は、MRIを使いディスレクシアの男女と非ディスレクシアの対象群を比べたところ、有意な違いがあることを明らかにした。このことは、脳の男女差をもとにディスレクシアは男女で異なる現れ方をする可能性があることを示唆している。

この実験はディスレクシアの男性と女性の両方を対象に行われ、ディスレクシアの女性と非ディスレクシアの女性(子供と成人の両方)の脳解剖を直接比較した初めての研究である。Brain Structure and Function誌(オンライン版)に発表された。

ディスレクシアは女性より男性のほうが二~三倍多く現れる。このため「女性のディスレクシアは見過ごされてきた」と、同論文の第一著者であるGuinevere Eden, PhD(学習研究センター長、国際ディスレクシア協会前会長)は述べている。

「これまで、男性を対象に行われてきた研究結果は、男女両方に一般化可能だと考えられてきた。だが今回の研究は、男のディスレクシアと女のディスレクシアを分けて取り組まなければならないことを示唆している。そうすることでディスレクシアの根本原因、さらには場合によっては治療方法の解明につながるかもしれない」(Eden博士)

ディスレクシア以外の研究では、男性の脳と女性の脳は全般的に違うことが示されていると、同研究の主席著者であるTanya Evans, PhDも言う。

「脳解剖には男女特有の差がある。女性は言語作業を右脳と左脳の両方で行う傾向があるのに対し、男性は左脳しか使わない傾向がある。また、エストロゲンなどの女性ホルモンは脳損傷後に脳を保護する場合があるなど、性ホルモンが脳細胞に関係することも知られている。ここから、本研究で報告された男女差を説明する道筋があることが示唆される」

本研究では118名を対象に、ディスレクシアの脳構造と非ディスレクシアの脳構造を比較した。調査は成人男女と子供の男女のそれぞれに分けて行われた。
先行研究と同様、男性ディスレクシアの脳では、言語処理を行う部位の灰白質がより少なかった。女性ディスレクシアでは、感覚処理と運動処理に関係する部位の灰白質がより少なかった。

これらの結果は、ディスレクシアの根本原因を解明すること、また言語と感覚処理との関係を理解することに向けて、重要な意味を持つとEvans博士は言う。


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もうひとつ、dyslexia girlsで検索していて見つけたコラムを訳してみました。


「私が学校で落ちこぼれていたのはディスレクシアのせいかもしれない」

原文はこちら


保守党大物議員Lord Heseltineの娘であるコラムニストのAnnabel Heseltineは女子校協会に対し、「ディスレクシアは男の子のほうが圧倒的に多く診断されているが、女の子においても同じぐらい多く見られることが研究によって示唆されている」と言うつもりだ。

Annabel Heseltineは一女三男さらには弟と父親がディスレクシアのうえ、自分自身もそうかも知れないと思い始め、診断テストを受けることを検討している。
「自分自身の昔の通知表がたまたま見つかり、それを見ていたら『発達の遅れ』『考えをまとめられない』『きちんとコミュニケーションをとれない』といったコメントが次々と出てきて、もしかしたら自分も弱いディスレクシアかもしれないと思い始めた」。Annabel48歳、インディペンデントスクール(訳注:政府などの援助を受けない私立学校)に子供を通わせる親のための雑誌「First Eleven magazine」の編集長を務める。

15歳の時、校長先生に呼び出され、『家政学や裁縫のほうに進んだらどうか。美術はどう?』と聞かれたが、わたしは美術はめちゃくちゃに不得意だったので頭に来た」
そこで当時在籍していた全寮制女子校を退学し、女子高校生を受け入れていたStowe Schoolに入学。Aレベル(イギリスの大学入学資格試験)ではB1つ、C1つ、D2つ獲得した。これは「今日の基準では最低」だと言う。

「もし誰かに『あなたはディスレクシアですよ』と言ってもらえたら、本当に楽になれると思う。もし自分がディスレクシアなら、学校時代そして卒業してからの人生でずっと抱えてきたフラストレーションの説明がつくのだから」

娘のイザベラ(9歳)は読書が大好きだが、ディスレクシアの診断を受け、学校で少し手助けを受けている。
Annabelは教頭先生らに対し、「発達が遅い、またはポテンシャルを出し切れていない女の子がいたら、ディスレクシアを疑ってほしい」と伝える予定だ。
「一部の研究では、ディスレクシアには男女差はないとされているのに、男の子に比べて女の子がディスレクシアと診断されることはあまりに少ない。これはどういうことか」。
「この説をつきつめていくと、ディスレクシアだと気づいてもらえていない女の子がまだたくさんいるはず。
女の子は男の子より真面目で責任感が強く、一生懸命努力する。女の子のディスレクシアは表れ方が違う可能性がある

「ディスレクシアは一人一人出方が異なる。それでも、できるだけ幼いうちに気づいてあげることが必要。『できる』と自分で思っていることができないとフラストレーションがたまり、自信を失うことにつながるのは必至だから」

イギリスでは375,000人の児童を含め、10人に1人がディスレクシアの診断を受けている。ディスレクシアの診断を受けたことで追加的教育を受ける男の子は、女の子の3倍にのぼる。

ディスレクシアの症状は、年齢が低い子供だと、話し言葉の発達の遅れや、フォニックス・綴り・読み書きの問題などがある。思考が混乱したり、短期記憶が悪いといった症状に苦しむこともある。

ディスレクシアの発生率に男女差があるかどうかに関する、決定的な証拠はない。
過去20年間にアメリカで行われた大型研究(イェール大学、ボウマン・グレイ大学、コロラド大学)では、女の子と男の子のディスレクシアの発生率は等しいとされている。
しかしながら、イギリスとニュージーランドの1万人の子供の読み能力を調べた研究(ウォーウィック大学とロンドンのキングスカレッジ)によると、ディスレクシアの男の子は最大22%である一方、女の子のディスレクシアは最大13%であった。

なかには、ディスレクシアというのは中産階級が学業不振を隠すために使うレッテルだと主張する批評家もいる。
ダラム大学で教育心理学を教えるJulian Elliott氏は、30年以上の研究によってもなお、ディスレクシアを医学的状態だと特定する証拠を見つけていないと主張する。
Annabellはこれに対し「私もこの人と同じぐらい『本当?』と思うけど、でも色々つなげてみても、また自分の娘という動かしがたい証拠からも、ディスレクシアというものが存在すると思わざるを得ない。
もしかしたら、中産階級の親は、ディスレクシアの子供に何らかの対処をしやすいのかもしれない」



2013-07-19

英国諜報機関「ディスレクシアだからこそ暗号解読能力が高い」、そして猫の首輪にSDカードをつけたあの人も・・・?

アメリカやイギリスでは目下、元CIA諜報部員、エドワード・スノーデン氏による内部告発が日本の何倍も大騒ぎになっているようですが、その流れでこんな報道が出てきました。

☆  ☆  ☆

英Daily Mail紙、2013/07/13:
原文はこちら 

  • トップレベルの暗号解読担当員は、ディスレクシアだからこそ、複雑な暗号を解読できる
  • 英国諜報機関GCHQの上層部「ディスレクシアの人は暗号を見たときに、普通の人には分からないようなことが”見える”」
  • GCHQでは部内にディスレクシアサポートグループを開設
  • 英国下院はこの措置を称賛している



イギリスのトップレベルの暗号解読担当員や分析官の多くは、ディスレクシアだからこそ複雑な暗号を解読できる。イギリス諜報機関GCHQが明らかにした。

昨晩、GCHQの担当者が語ったところによると、GCHQのなかでも最も才能のある暗号解読担当者は、単語を読んだり解釈したりすることに困難を覚えているという。
だがそのことが実際のところ、暗号解読に役立っている。なぜなら、ディスレクシアでない人には見えないことが、ディスレクシアだと「見える」のだ。

GCHQの暗号解読担当員や暗号設定担当者は、諸外国さらにはテロリストなどの犯罪組織によるサイバー攻撃からイギリスを守る戦いにおいて役割を担う重要な部隊だ。先日も、米国の内部告発者エドワード・スノーデン元CIA臨時職員による「GCHQは米国の諜報機関を通じてイギリス国民のネット情報にアクセス可能である」との告発の矢面に立たされたばかりである。

英国下院議会の情報・安全保障委員会は先週、GCHQ上層部がディスレクシアの暗号解読担当員のスキルを活用する環境を整えたことを称賛した。
イギリスのサイバー攻撃の脅威は「過去最高水準」に達しており、規模の面でも複雑さの面でも「不安材料」だとしている。

同委員会によると、GCHQは最近、「ディスレクシア/ディスプラクシア・サポートグループ」を立ち上げた。「メンターによる一対一の実践的なサポート」を提供するという。

GCHQの広報担当者によると、同機関に在籍する暗号解読担当者の中でも最も才能のある人たちがディスレクシアだという。「この人たちは非常に独創的だが、サポートが必要な場面もある。具体的には、ITツールやソフトウェアなどによる職場環境の調整、あるいは労働時間の短縮などだ」。

昨年行われた講演会で、GCHQのトップであるSir Iain Lobbanはこう述べた。「最高の人材を集め、その才能を活用することが私の仕事。偏見やステレオタイプによって機敏な対応や革新が阻まれることは、あってはならない」。
サイバー犯罪の専門家で、ロンドン警視庁で以前コンピューター犯罪の捜査を担当していたAdrian Culley氏によると
ディスレクシアの人は、暗号のパターンや反復、省略を見抜く能力がある。他の状況ではディスレクシアはネガティブなものだとされるのかもしれない。だがほとんどの人が完成近くになるまでジグゾーパズルの全体像が見えないのに対し、ディスレクシアの暗号作成担当官は、わずか2ピースからでもジグゾーパズルの全体像を見ることができる」。



☆  ☆  ☆


これを訳していて思い出したのが、「PC遠隔操作事件」で逮捕されている人のことです。

検索すると、この事件も闇が深そうですが。参考

この人の字も、もしかしてディスレクシアかも?と思わせるものでした。





・2月10日●のトツゼンの家宅捜●サクそしてタイホは、本当に寝耳に水でした。
・私は遠●カク操作ウイルス事件と一切関係ありません。
・私には前科がありますが、転職してから5年間、まじめに働いてきました。
・現在の私の立場は、他の4人のゴニンタイホされた方たちと同じです。
・江ノ島にはバイクでツーリングに行っただけですし、雲取山にはただ登山しただけです。
・私がネコに首輪をつけたなどコウトウムケイな話です。
・また、私は●●●アイシスのようなウイルス●に分類されるプログラムを作る能力はありません。アイシスに使われているプログラミング言語、C#での開発経験もありません。
・私のPCを見てもら●ば、そのようなものを作ったコンセキが無いことは分かるはずです。
・サイバンカンの方にはどうか分かってほしいです。
・現在拘束されていてとてもつらいです。1日も早く自由にしてください。
    ∧家族はもっとつらいと思います。
・さいごに私を友としてくださったている方々にカンシャを伝えたいです。
以上です。
片山祐輔
平成25年2月26日


語彙力はすごくあるのに、カタカナで書いてしまう。
かなりディスレクシア的だと思います。

(弱いディスレクシアの家庭教師君によると、漢字の代わりにカタカナで書くのは「これよくわかります」「思考のスピードに字を思い出すスピードが追いつかないのでついそうしてしまう」のだそうです)

逮捕された人は、警察が太刀打ちできない、超優秀なハッカーだったわけで。
この人がもし、ディスレクシア(または別の発達凹凸)だと子供の頃に気づいてもらえて、その才能を認める言葉をかけてもらえてたら。
自己肯定しながら成長することができていれば、もしかしたら今頃は警視庁で腕利きのサイバー犯罪捜査官になって「警視庁で最も有能な暗号解読担当者はディスレクシア」と言わせていたかもしれないのに…

2013-07-08

スポーツとリーダーシップの才能を開花させたディスレクシア:中竹竜二『鈍足だったら、早く走るな』




超ポジティブなディスレクシアの当事者本です!

著者の中竹竜二さんは1973年生まれ。
早稲田大学ラグビー部の伝説的主将にして、現在は全日本のコーチの育成を行っている方です。

本書はジャンル的にはビジネス書ですが、ディスレクシア的には「底抜けにポジティブなディスレクシアの発想」を知ることができます。

美術や工芸方面に秀でたディスレクシアの人の話はけっこう聞きますが、スポーツとリーダーシップに優れたディスレクシアの、本人による話は、日本語では本当に珍しいです。

「中竹さんは僕がこれまで知った人の中でもっとも『凄い人』です。
彼のストーリーにとくと耳を傾けて下さい」
--楠木建(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
大学選手権2連覇に導いた、元・日本一オーラのない監督の、「どんな人でも輝く」才能の見つけ方

と帯にはあります。

[小学校の]国語の時間でした。先生にあてられて、みんなの前で本を声に出して読もうとしたとき。(あれっ)?マークが頭のなかをかけめぐりました。頭で読んでいる文字が言葉にならないのです。声に出すと不思議と違う言葉になり、つまずいてしまう。・・・何とも気まずい思いを胸に、黙って腰を下ろしました。他の教科では自分より成績が悪いはずの友人がすらすら読めるのに、ナゼなんだろう。・・・
自分がいわゆる読字障害であることがわかったのは、かなり後のことです。当時は、自分と他の友達が違うことを認めるのが、ただただ怖かった。

いわゆる典型的なディスレクシアの症状です。
中竹少年がすごいのはこの後です。
四年生のとき、「暗記してしまえばいい」と思ったというのです。
毎晩、夜中までかけて、教科書の漢字を調べながら暗記を敢行。
担任の先生にも恵まれ頑張ったものの、しかし暗記作戦はほどなく挫折。
普通に、人並みにできるようになるには、自分は普通にやってたらダメだ」と気づき、その頃から先生の言う通りでなく、自分なりに方法を工夫するようになっていたとのこと。

最終的に覚えればいいのなら、書く必要はないんじゃないかな
黒板を1枚の絵と見立てて、まるで念力のように、じっと目に焼き付けるようにしてみました。・・・その後も、ノートを取るのは一切放棄し、小学校5年生ぐらいからはノートを買うことすらヤメてしまいました。・・・
覚えるために、同じこと何度も書くなんて意味がない・・・」ならば、一回書いて5分見る。一回書いたら、それを見ないで違うページに書くというやり方がいいんじゃないか。またもや先生の言いつけを無視して、自分のやり方で書き取り問題をクリアしていました。

ここまで自力でたどりつくとは、なんて戦略的なのでしょう!!
うちの子がそこまで考えられたら、力一杯ほめてあげたいです。
でも、ノートを買いすらしないのを、私なら信頼して見守れるか、自信がありません・・・

#子に上の引用部分を読んであげたところ、すごく受けていました。
「黒板をじっと見て覚えてみたら?」と聞いたところ、「それは無理でしょ~」とのことでしたが、実は思いも寄らなかったに違いありません。



タイトルの話もすごい。
「鈍足」だった中竹少年は(とはいえ50m7.6秒まで行ったそうですが)、普通の人なら倒れてから「イテテ・・・」と立ち上がる数秒間を、自分はぱっと立ち上がって動けばいいと気がつきます。
ボールがある場所に早く動けばいい」、「「次にボールがどこに行くのか」を先回りしながら動けばいい」と気づき、小学校高学年くらいにはチームメイトから一目置かれる存在になったとのこと。

ならば、試合時間の80分間、絶対に全力で走らない。・・・なぜなら、全力で走ったところで鈍足であることは変わりがないのですから。全力疾走をせず、その分、時間いっぱい余力をもって動き回り、運動量で勝負したほうがいいと考えたのです。

なんという逆転の発想!!

高校受験は、東筑高校(進学校でありラグビーの強豪校)に入りたくて、猛勉強したそうなのですが、そのやり方も相当に戦略的です。
県立高校なら教科書以上のことは出ないだろうと踏んで、教科書だけを徹底的に勉強したのもそうですし、
「塾で勉強の仕方を押しつけられるのが何よりきらいだった」、でも情報はほしいので、塾から帰るところの友人にベランダから声をかけて、雑談ついでに受験の情報収集をしていた(!)というのです。

こういう不思議な社交性は、とてもディスレクシア的だと思います。
二次障害がなければ、ディスレクシアは本来こういう人たちでしょう。
学校の成績はいまいちでも、友達は多く、対等につきあっている。
高圧的にも卑屈にもならず、欲しい情報をさりげなく得てしまう・・・

ディスレクシアの最大の才能は、think outside the box(直訳すると「箱の外に出て考える」、枠にとらわれない、さらには枠を壊したり、「そもそも枠って何?」というイメージ)ができることにあると言います。
本書はそういった、枠を壊したり逆転させたりするエピソードが満載です。

何より、全編がポジティブトーンなのがすばらしいです。

ディスレクシアの子は、長い目で見て、工夫したり失敗したりできる環境を与えてあげさえすれば、好きなものを見つけたあとは持ち前のエネルギーで勝手に伸びていくだろう。そう信じられる本です。




2013-07-04

のび太は(きっと)ディスレクシア

のび太はディスレクシア(かも)の続きです。

のび太は字(だけ)が苦手ですが、それに加えて独創性・戦略性・正義感・手先の器用さなど、ディスレクシアに多くみられる性質を持っています。


「野比のび犬」が登場するシーンを集めてみました。



『ドラえもん』第15巻「ポータブル国会」


山→山だけでなく、三→三という間違いもしています。
この間違い方はとてもディスレクシア的だと思います。
非ディスレクシアなら、あたりとは間違えると思うのですが。



第23巻「透視シールで大ピンチ」

このあと、出来杉君に「すごく下手くそで特徴のある字」と言われてます。

エピソード全体がとてもディスレクシア的です。


・長音が書けない
・「より」が書けなくなって小さい字で詰めて書く
・「ボールペンシル」という言葉を作ってしまったり
(きっとカタカナが苦手で、うっかり合体させてしまったのでしょう)
・お礼状を書くのが嫌で「よけいな物くれるからだ」とまで言う
・書くのは腰が重いが、出しに行くのはてきぱきやる
・「両方に点があるならまあいいだろ」って・・・(笑)




ドラえもん第8巻「ライター芝居」

このあとのび太はジャイアンとスネ夫を一発で打ち倒す。
「これで町は平和になるだろう」町を去ろうとするのび太。
しずちゃん、のび太を追いかける・・・も、のび犬と手を取り合って去っていく。
ドラえもん「もっと国語を勉強しろよ。のびをのびと書いてある」


おそらくこれが、「野比のび犬」が初登場したシーンだと思われます。

「くだちい」のような、ひらがなの鏡文字は、
身近にいないと思いつかないと思います。

のび太は射撃が得意です。
射撃のときの雰囲気と字の稚拙さとの落差が、とてもディスレクシア的です。






私も子供に言われるまで何十年もずっと、
のび太はバカキャラだとなんとなく思ってました。

でも、ディスレクシアだと思って読むと、
のび太のいいところが俄然光って見えてきます。

この子はなんて独創的で、自分をしっかり持っていて、
へこたれない明るい子なんだろう。
字が正しく書けない=バカだと決めつけるのは、
あまりにも一面的な見方なんだと。

あくまでも仮定の話ですが、もしも藤子・F・不二雄先生が、
ディスレクシア的な子とはこういうものだと分かって、
のび太というキャラクターを造形していたとしたら。
それこそ、何十年も時代の先を行っていたことになります。



そして、
「のび太が世間一般にどういうイメージを持たれているか」は、そのまま、
「ディスレクシアの子が周囲にどう思われているか」、
なのです。

うちののび太、さらには全国ののび太は、
字を覚える苦労以上に、
「自分の名前すら書き間違えるような子は、よほどバカに違いない」
という、世間の決めつけと戦わなくてはなりません。

さらには、字を習う前にはなかったそういう決めつけに
何度も何度もさらされることで、
「自分はよほどのバカに違いない」
と、自分で自分を決めつけてしまうことと戦わなくてはなりません。




2013-07-01

のび太はディスレクシア(かも)

子が、「のび太ってディスレクシアだと思う」と言いました。

最初は「そうかも」と笑って聞き流していたものの、注意深く読んでみると、実はのび太はディスレクシア的性質をかなり持っていることが分かります(!!)

うちにある『ドラえもん』でできる範囲で検証してみました。
参考にしたのは以下の5冊です:
テントウ虫コミックス ドラえもん16巻(昭和55年第16刷)、18巻(昭和55年初刷)、
藤子・F・不二雄全集 ドラえもん2、7、10



のび太の誤字と言えば、自分の名前を「野比のび犬」と書いているのが印象的です。

名前を間違えるなんてどれだけ・・・と思いますが、実はうちの子もあせっていると、自分の名前をけっこう間違えます。
(一部が鏡文字になったり、最後の1文字を書き忘れたりします)


のび太の手紙は誤字が多い。この間違い方も消し方もディスレクシア的


なんとのび太は鏡文字も書いてます

150と1500を間違えたのび太。0の数を正しく書くのはうちの子も苦労してます



「もはん手紙ペン」すべてのディスレクシアの子が待ち望んでます・・・(笑)


誤字エピソードはこのようにちょこちょこあります。

のび太は誤字が多いのと、テストが0点ばかりなので、バカという印象があります。
でも、よく読んでみると、決して愚鈍ではありません。
ペーパーテストに限って出来ないだけです。
しかものび太はしょっちゅう机に向かっています。決して怠けてなんかない(!!)。
これは、かなりディスレクシアっぽいです。


ドラえもんに頼るのも、よく読むと全然依存的ではありません。
新しい道具を与えられてぱっと使ってみるあたりは、好奇心が非常に旺盛です。
道具を使って友達や大人を出し抜こうとするところには、正攻法でないやり方で目的を達成する「戦略的思考」が感じられます。
自分で使い方を工夫したり、「~な道具はないの」と聞いたりするところは、とても独創的です。
正義感もあります。ドラえもんの全登場人物のなかで一番正義感があるのは、のび太ではないでしょうか。


これらはすべて、ディスレクシアによくみられる性質と言われています。



のび太は手先が器用です。



のび太りりしい・・・!
自分が正しいと思ったことは、鉄の意志で貫きます。
このあと「いいアイデアを思いついたぞ!」と映画会社に直談判。
テストで0点ばかりの子の行動にしては不思議すぎます…ディスレクシアでなければ。

まとめると、のび太は
・誤字が多い
・ペーパーテストに限ってできない
・独創的
・好奇心が強い
・戦略的
・手先が器用
・正義感が強い


のび太は引きこもり型ADHDという説もありますが(「のび太/ジャイアン症候群」参照)、実はのび太はディスレクシアだったのではないでしょうか・・・?!

そして、のび太を生み出した藤子・F・不二雄は、ディスレクシア的なものに非常に理解があったか、またはご本人がディスレクシアだったのかもしれません。


藤子・F・不二雄さんは、ご自身のディスレクシアの特徴である「字が苦手」「学校で怠けている子扱いされていた」と、やはりディスレクシアの特徴である「発明力」を、のび太とドラえもんに分配しているのかも…と想像すると、ディスレクシア的にはわくわくしてきます。

もちろん、すべては憶測に過ぎません。
でも、最近ディスレクシアの人が書いた文章を集めているなかでも、『ドラえもん』はディスレクシア文学(というジャンルを今作りました)の基準にかなりあてはまるのです。

(この項、のび太は(きっと)ディスレクシアに続く)