on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
-
​​
知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
-
​​
独創的で、​​対人能力が高い。
​​
全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力
に長ける。
- ​音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- ​読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから​
- ​細​​​​かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される-
​ ​
10人に1人程度いるというのが通説
​。アメリカの調査では3人に1人とも
- 家族性であり、遺伝による​。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい



当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2013-03-30

文科省版ディスレクシアのチェックテスト、と見なせるもの



文科省が2003年に、
その中で「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」として、
全国370校の公立小学校にアンケートを行ったようです。

このアンケートは、

A. 学習面(「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」)
B. 行動面(「不注意」「多動性-衝動性」)
C. 行動面(「対人関係やこだわり等」)

に著しい困難を示す生徒の割合を調べるために作ったようなのですが、
見方を変えればまさに

A. LD(ディスレクシアなどの学習障害)
B. ADHD(注意欠陥多動性障害)
C. アスペルガー(高機能自閉症)

のチェックテストになっているので、ここに転載してみます。

#リンク先の文科省のページでは「ディスレクシア」「学習障害」という表現を使っていないので、
検索してもヒットしないことでしょう。もったいないことです・・・


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特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議


質問項目


A. <「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」>
(筆者註:以下のうち「計算する」「推論する」以外、つまり太字の項目を、
日本版・小学生のディスレクシアチェックテストと見ることができます。)


聞き間違いがある(「知った」を「行った」と聞き間違える)
聞きもらしがある
個別に言われると聞き取れるが、集団場面では難しい
指示の理解が難しい
話し合いが難しい(話し合いの流れが理解できず,ついていけない)
適切な速さで話すことが難しい(たどたどしく話す。とても早口である)
ことばにつまったりする
単語を羅列したり、短い文で内容的に乏しい話をする
思いつくままに話すなど、筋道の通った話をするのが難しい
内容をわかりやすく伝えることが難しい
初めて出てきた語や、普段あまり使わない語などを読み間違える
文中の語句や行を抜かしたり、または繰り返し読んだりする
音読が遅い
勝手読みがある(「いきました」を「いました」と読む)
文章の要点を正しく読みとることが難しい
読みにくい字を書く(字の形や大きさが整っていない。まっすぐに書けない)
独特の筆順で書く
漢字の細かい部分を書き間違える
句読点が抜けたり、正しく打つことができない
限られた量の作文や、決まったパターンの文章しか書かない
学年相応の数の意味や表し方についての理解が難しい
(三千四十七を300047や347と書く。分母の大きい方が分数の値として大きいと思っている)
簡単な計算が暗算でできない
計算をするのにとても時間がかかる
答えを得るのにいくつかの手続きを要する問題を解くのが難しい
(四則混合の計算。2つの立式を必要とする計算)
学年相応の文章題を解くのが難しい
学年相応の量を比較することや、量を表す単位を理解することが難しい
(長さやかさの比較。「15cm は150mm」ということ)
学年相応の図形を描くことが難しい(丸やひし形などの図形の模写。見取り図や展開図)
事物の因果関係を理解することが難しい
目的に沿って行動を計画し、必要に応じてそれを修正することが難しい
早合点や、飛躍した考えをする


B. <「不注意」「多動性-衝動性」>

学校での勉強で、細かいところまで注意を払わなかったり、不注意な間違いをしたりする
手足をそわそわ動かしたり、着席していても、もじもじしたりする
課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい
授業中や座っているべき時に席を離れてしまう
面と向かって話しかけられているのに、聞いていないようにみえる
きちんとしていなければならない時に、過度に走り回ったりよじ登ったりする
指示に従えず、また仕事を最後までやり遂げない
遊びや余暇活動に大人しく参加することが難しい
学習課題や活動を順序立てて行うことが難しい
じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する
集中して努力を続けなければならない課題(学校の勉強や宿題など)を避ける
過度にしゃべる
学習課題や活動に必要な物をなくしてしまう
質問が終わらない内に出し抜けに答えてしまう
気が散りやすい
順番を待つのが難しい
日々の活動で忘れっぽい
他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする


C. <「対人関係やこだわり等」>

大人びている。ませている
みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダー博士)
他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり、「自分だけの知識世界」を持っている
特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理解していない
含みのある言葉や嫌みを言われても分からず、言葉通りに受けとめてしまうことがある
会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりすることがある
言葉を組み合わせて、自分だけにしか分からないような造語を作る
独特な声で話すことがある
誰かに何かを伝える目的がなくても、場面に関係なく声を出す(例:唇を鳴らす、咳払い、喉を鳴らす、叫ぶ)
とても得意なことがある一方で、極端に不得手なものがある
いろいろな事を話すが、その時の場面や相手の感情や立場を理解しない
共感性が乏しい
周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう
独特な目つきをすることがある
友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築けない
友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる
仲の良い友人がいない
常識が乏しい
球技やゲームをする時、仲間と協力することに考えが及ばない
動作やジェスチャーが不器用で、ぎこちないことがある
意図的でなく、顔や体を動かすことがある
ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができなくなることがある
自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる
特定の物に執着がある
他の子どもたちから、いじめられることがある
独特な表情をしていることがある
独特な姿勢をしていることがある

2013-03-22

4年生のまとめ漢字テスト



まとめ漢字テストの前には、学校から問題用紙をもらってきます(この子だけかもしれませんが)。
それを使って1週間、予行演習をします。


 1日目:56/100

泣きながら間違いの直し。
「毎日やればテストまでにはできるようになるよ。前のテストもそうだったじゃない。
ショックなの?くやしいの?」
と聞くと、「そうじゃない」。

ものすごく居心地が悪そうというか、押し込められている感じなので、
「自由がなくなるのがいやなの?」と聞くと「そうだ」と。

漢字は枠を押しつけられているような気がして嫌だと言います。
「自由」とか「枠」といった言葉は使いませんが。


2日目:88/100

「全部できちゃうよ?おれ天才じゃね?」
と言いながら埋めていって、この出来(苦笑)。

棒が一本足りない/多いようなミスでは、
「自分が書いた字を、自分で見てないのでは?」
と思えることもあります。






3日目:94/100

土日をはさんで間があきましたが、幸いにも忘れていませんでした。

「この裏もテストの範囲。明日配られる。
答えはここ←に書いてある」
と言うので、試しに読ませてみました。


「老」を「じじい(笑)、じゃなくて…」と言ってみたり、
「殺」を「しね、じゃなくて…」と読んだりするあたりが
面白い間違い方でしたが、
それ以外はだいたい読めました。
(漢字のだいたいの意味は覚えているけど、正確な読みはわからない、という間違いはちょくちょくあります)

「夫」と「未」を見て「これどこが違うの」というあたりは
本当に不思議です。




4日目:94/100

点数は同じですが、間違っている箇所は微妙に違います。
昨日できても今日できなかったり。

この日は家庭教師の先生(少し字が苦手)
に見てもらう日。
先生~、いくつか間違っているところに○をつけているんですけど。。
このように、二人とも漢字に関してはしぶしぶやっています(笑)。





この家庭教師君の存在そのものが、
子にとっては、本当に本当に大きな心の支えです。

ロールモデルって、こういう人のことを言うのでしょう。

そろそろ学校で「字がきたない」と友達に言われるようになってきましたが、それでもめげないのは
家庭教師君が「字がきたないけど立派に育った人」のお手本になってくれているからだと思います。


☆  ☆  ☆


家庭教師君はまだ大学1年生なのに、今から就活が憂鬱なようです。
「大学に入って字を書かなくなったらますます書けなくなってきた、
履歴書を書くのが気が重い」と言っています。

「代筆してもらえば?」「誤字チェックしてあげるよ」「手書きが必要ない会社を選べば」
「就活しないで会社に入る道を探ったら」・・・・等々、作戦会議してます。



5日目、実際のテスト。


2013-03-20

「ディスレクシアであることの利点」

The Dyslexic Advantage: Unlocking the Hidden Potential of the Dyslexic Brain
(ディスレクシアの利点・ディスレクシアの脳に秘められた潜在能力を明らかにする)
の一部をまとめてみました。
ディスレクシアについて、とってもポジティブな見方ができる本です。

☆  ☆  ☆


ディスレクシアは脳の違いによって生じる現象。
ディスレクシアの人は次の4つの能力のひとつまたは複数を示す。

1.      空間把握能力
=空間における物体の形、大きさ、動き、位置、位置関係、およびそれらの相互関係を把握する力

<どのような形で表れるか>
・頭の中で、3Dで事物を思い浮かべることができる
・レゴ、工作、プラモデルなどが好き
・親が、空間把握能力を必要とする職業に就いていることが多い(エンジニア、建設・建築関係、生物化学、医療、発明)
・空間情報を正確に記憶し、思い起こして、操作することができる
・ある分野の空間把握は得意だが、他の分野の空間把握はそうでもなかったりする

<この能力が裏目に出ると…>
・鏡文字を書く、文字を反転して読んでしまう
・言語表現に困難を感じる
・遅咲き。その発達度は独自に判断すべき
・幼い頃は学校で苦労するが、教室の外では独創性を示す

<さらに…>
・非常にクリエイティブな人々。

2.      つながりを把握する能力
=異なる物事や概念、出来事の相互関係を見抜く力。さまざまな領域のアプローチやテクニックを使い、物事をさまざまな視点から見る力。

<どのような形で表れるか>
・ある主題に関する細かい情報を組み合わせて壮大な全体像を描き出したり、本質を指摘したりする
・「共通性」と「関連性」の2つの軸でつながりを把握する
・物事を違った角度から眺めることができる
・一つの専門性に特化するのではなく、領域横断的なアプローチを好む
・さまざまな分野にまたがって活躍する人が多い。普通とは違う経歴を持つ。
・全体像の把握を通じて言語情報を理解する
→つっかえながら読んでいるにもかかわらず、内容を深く把握できる

<この能力が裏目に出ると…>
・客観型試験(スピードや細部の正確さが問われる、標準化された試験)に弱い
・学校では、単純な指示や質問の意味をとらえきれなかったり、人とは違う点に着目してしまったりして、出遅れる
・文脈がないと文章の意味を把握しづらいため、客観式試験に弱い
・連想が働きすぎて、音や意味が似た単語と読み間違える
・紙の整理が非常に苦手
・論理立てて、順序立てて論じるのが苦手
・全体像がわからないと暗記もできない
→背景知識をどんどん与えるべき

3.      物語を作る能力
=過去の個人的経験(エピソード記憶、個人的記憶)の「心的場面」をつなぎ合わせて、過去・現在をリアルに思い出したり、未来をリアルに思い描いたり、その中で新しい概念を試してみたりする力

<どのような形で表れるか>
・記憶が場面に結びついており、描写や例の形をとる。
・(言葉として)抽象化して取り出した記憶は弱い
・エピソード記憶が意味的記憶より強いため、独創的である。
・物語の形で考え、伝える。
ちょっとした刺激をきっかけに記憶がありありとよみがえる

<この能力が裏目に出ると…>
・丸暗記に弱い。学校で出された単純な指示が覚えられない
問われたこと「だけ」に答えるのが難しい

<さらに…>
・この能力ゆえに、ディスレクシアとはどういう状態を指すか、正しくかつ適切な希望を持てる物語を最初から伝えなければならない。

・抽象的な情報は例や物語の形で伝えれば記憶できる
・字を書くのが苦手でも創作は好きである場合が少なくない。

4.      未来を予測する能力
=エピソードのシミュレーションを使い、過去や未来の状態を正確に予測する力
3.の能力と重なる部分もあるが、その中でも特に、独創的なシミュレーションを行ったり、想像の産物を構築する能力を指す

<どのような形で表れるか>
・単なる自由な空想ではなく、「正確」な予測を目指すところがポイント
・まず洞察に至り、そこから(時系列などを)さかのぼる。
・観察したパターンをもとに、過去や未来を思い描ける
・「記憶力の悪い、一族の歴史家」
・抽象的論理とは対極にある

<この能力が裏目に出ると…>
・スピードや効率性は落ちる
・直観的な思考プロセスは、端から見るとぼけ~っとしているように見える

・学校ではぼけ~っとするのが難しいため、洞察を得ることが難しい

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関連記事(Eide博士の文章の翻訳):
隠れディスレクシア
ディスレクシアは例外から学ぶ

2013-03-14

テレビゲームはディスレクシアの子に役立つ可能性がある


Video Games May Aid Children With Dyslexia

ニューヨークタイムズ紙、2013年3月5日
の翻訳です。


テレビゲームは
ディスレクシアの子に役立つ可能性がある


アクションゲームで遊ぶことは、ディスレクシアの子供の読み能力を向上させる可能性があることを、イタリアの研究者が明らかにした。

Current Biology誌(オンライン)で先週発表されたこの小さな研究では、各10人のディスレクシアの子供からなる2つのグループを対象に実験を行った。1つのグループは80分間×9回、アクションゲームで遊んだ。もう一方のグループはアクション要素のないゲームで80分間×9回遊んだ。ゲームは研究者らが小売店で購入したもの。研究者とゲーム会社の間に金銭関係はない。

実験開始時点における2つのグループの年齢、IQ、読み速度、誤答率、音声学的スキルは同じであった。80分間のセッションの前後に注意力と読み能力を計測し、比較した。


アクションゲームで遊んだ子供は、速度+精度の合計、非語(ランダムな文字列で構成された語)の認識、反応時間など、さまざまな点でアクション要素のないゲームで遊んだ子供のスコアを上回った。また、視覚的・聴覚的なさまざまな作業を子供たちに行わせ、その途中に邪魔を入れることで注意力を計測するテストでも、アクションゲームで遊んだ子供の方が高いスコアをマークした。

「注意力向上と読みの力の向上との相関関係は非常に高かった。注意力の変化が読み能力の向上に転換している」と、本論文の第一著者でパドゥア大学のポスドクフェロー、シモーヌ・ゴリ氏は述べている。


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具体的なゲームの名前は書かれていません。

New York Timesのサイトに書かれている、この記事への感想より:

「私の息子はディスレクシアでした。さまざまな改善策をとりました。おそらくすべて役に立ったのだと思います。その中でもテレビゲームは読みの流ちょうさとスペリングを改善する大きなきっかけになったことは間違いありません。かつては読めない程ひどい字を書いてしました。私はそんなにゲームが好きではなく、中2頃まで家でゲームをすることも許していなかったのですが、結果としてこうなったんですね。
ゲームはもちろん、読書の代わりにはなりません。文学への愛は育まれませんし、多彩な概念や経験を味わわせてくれることもありません。
息子は現在大学生で、ちゃんとやっています。先日、もっと本を読もうかなと言っていました。


・テレビゲームは暴力助長や肥満の問題と結びつけて論じられることが多いが、ついにゲームのポジティブな効果に関する研究が出てきたのは喜ばしいことだ

・ディスレクシアの子の役に立つような、スピード・正確さ・反応時間を競うようなゲームを開発してほしい

・ディスレクシアであるうちの娘は9歳のとき、兄とWorld of Warcraftというゲームをするようになり、
それをきっかけに字が読めるようになり、攻略本を読破した。大学生になった今は、学年並み以上に読める。

・ゲームを通じてそんなにも字が学べてしまうなら、ゲームに登場する暴力も学んでしまうに違いない

・マリオカートのように、暴力的でないアクションゲームもある。ディスレクシアの子は周辺視野が優れているという研究もある。ゲームによるある種の視覚的刺激を求めているのかもしれない。

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先日、ランドセルのなかにプリントを30枚詰め込んでいたことにキレたら
「ぼくがだらしないのはこれのせいなんだね・・・」
と半年前に解禁したDSを自ら返上した子ですが、
脳トレとマリオカート、復活させてみますか・・・(苦笑)

うちも、小説などは読みませんが、攻略本とマンガは読んでいます。
本の虫だった私自身の子供時代を思えばちょっと残念ですが、
でも本以外を通じて、私が本から学んだことを感じているような気がします。


2013-03-06

予備校で見るディスレクシアの生徒

今年の大学入試がほぼ終わりました。

ディスレクシア(と本人はあまり分かっていない)のR君は、
最後までスペリングミスや-sの抜けがなくならなかったけど、
現役の時以上にいい答案が短時間で書けるようになって、
無事に東大の前期試験に駒を進めました。

ディスレクシアという状態があることを知ったこの1年、
予備校の演習で生徒と答案を見ていると、
一見「やる気がない」「エンジンのかかっていない」子に
ディスレクシアと思しき子がけっこういることに気がつきます。
20人のクラスに1人くらいは、ほぼ必ずいると言ってもいいくらいです。



☆  ☆  ☆




いま、私が特に目をかけているのは、2年生で理系のS君。
彼は字が超~乱雑!
しかも和訳が全部ひらがな!
「コンピューターはせいかつをふくざつにしたが、べんりにもした」みたいな調子で、あらゆる内容をひらがなで書き倒していきます。
書くスピードは非常に速いです。
「漢字で書ける?」と聞いてみたら、めんどくさそ~に書いてましたが、すぐにひらがなに戻ってしまいました。

都立トップ高に在籍しているので、高校入試を突破できる英語力はあるのでしょうが、ちょっと文構造が複雑になると、拾い読みになってしまいます。

板書は一切とらず。
そもそも授業を座って聞いているのもけっこう大変そうで、一番うしろでぐにゃぐにゃしています。

最初のうちは、書けるところまで書いたらノートの上に突っ伏して寝てしまい(寝たふりかも)
答案を見せてくれませんでした。
「ここまではよく出来てるよ。ここの訳が抜けてるから入れてごらん」
「単語の意味がわからない」
「persuade A to ...で"Aを説得して…させる"だよ、ここがAで、ここが...だね」
みたいな会話を何回してから、ようやく答案を隠さずに見せてくれるようになりました。

一方、英作文はすごい。
「エコな生活習慣の例を書きましょう」というお題で、他の生徒がなかなか手が動かないなか、
「グラフィックボードを××から◎◎に替えた」と一瞬で書いてしまいました。
例によってスペルミスだらけなのですが。
テーマを与えられれば、書く内容はすぐに思いつくようです。

本人いわく、囲碁が得意らしいです。


☆  ☆  ☆


もう一人、もっと早く気づいてあげればよかったと思う3年男子がいました。
都立トップ高を落ち、付属高から外部受験予定。
演習を解くスピードは非常に遅く、1時間かけても2パラグラフほどを読むのがやっと。
和訳の字は超乱雑。漢字は使う。誤字はない。
授業中はおどおどして、板書も取らず、授業がわかっている様子もあまり感じられない。

このクラスでは、150ワードの英作文を宿題にしているのですが、
彼は11月に入るまで一度も宿題を提出しませんでした。
11月も終わりに入って、初めて出してきたのですが、、、
まず用紙がよれよれ。
かばんの中でもみくちゃになったものを、「あった」みたいな感じで掘り出して提出。
英語の字も乱雑。語と語の間隔がはっきりしていない。

しかしよく読んでみると、自分の言葉でいい内容のものを書いているのです。
(「成功に運は関係ないか」というお題に対し、
「僕は日本に生まれ、食べるものにも住むところにも不自由していない、幸せな暮らしを送っているが、自分が日本に生まれたのは運である。だから成功は運に非常に大きく依存している」といった内容でした)
この、字と内容のギャップから、彼は実は読むのがつらいだけなのでは、、とようやくピンときました。

授業後、彼を呼んで聞いてみました。
「実は読むのがつらくない?どこを読んでいるかわからなくなったりしない?」

「ええっ?みんな1行飛ばしってしないんですか?」と彼は驚いていました。

私が一番驚いたのは、授業を受けていない時の彼は、
授業中とはまったく違う、生き生きとしたいたずらっ子の顔をしていたことです。
授業は本当に苦痛だったね、、、もっと早く気づかなくてごめんね、、、
という気持ちでいっぱいになりました。

「私はあなたみたいな人に特別な興味を持っている、困ったらいつでも質問に来てほしい。
あなたは地頭はすごくいい、英作の答案を読めばよくわかる。
あなたは人と違う物の見方をしている。そういう人は遅咲きなのだから、仮に今年は志望校に受からなくても、これからすごくのびる」
と力説して別れましたが、どうなったことか・・・・


☆  ☆  ☆

さらに思い返すに、大昔、大学生だったころに家庭教師で何ヶ月かだけ会った子。
中3でbとdの区別がつかず、ひらがなの「け」や「し」が左右逆でした。
当時の私は「こんなに頭の悪い子がいるなんて!」とあきれ半分、上から目線の憐れみ半分で、
自分の勉強の仕方を押しつけることしかできませんでした。
本当に本当に申し訳ないことをしたな・・・と思います。


今、ディスレクシアらしい生徒には、

・最初のうちはスペルミスは問わない
・内容の独創性をほめる
(実際、内容は人並み以上に独創的かつ主張がしっかりしていることが多い)
・単語を調べるのがつらそうなので、そこをサポートしてあげる。
(辞書と文章を行き来するのがつらそうなので)
・通常以上に反復練習につきあう
・鉛筆や定規をあてて読むようにさせる
・3年生に入ったら、徐々に漢字のミス・スペルミスを指摘していく。
・でも、スペルミスの多さを決して責めない。

何度でもほめるし、何度でもミスを直していく、という感じでしょうか。